年収300万円程度のしがないサラリーマンから不動産投資を開始し、家賃収入で年間4,000万円超を得るようになった著者による
「不動産投資開始のススメ」である1冊。
まず当て嵌まる読者層という視点から「年収300万円前後のサラリーマン」という時点で読者層は非常に多いと思われるので、
その点においては読者を意識して書いているという点では間違ってはいません。
実際にこれくらいの年収で不動産投資に興味のある、或いは開始したいと考えている方はいくらでもいることでしょう。
で、そんな方たちが不動産投資を開始する上で最もネックになっているのは「まとまった自己資金を用意するのが困難」という点でしょう。
著者はそれを「インターネットオークションを利用した転売で稼ぎなさい!」と諭します。
ヤフーや楽天のオークションに登録して家電製品(中古のデジカメやパソコン)車等を安く仕入れて転売しなさいということです。
ここまではいいでしょう。但し、問題は「自宅にある不用品を売る初級オークション」はともかく、
中級の「中古のデジカメ・パソコン・本」等を安く仕入れて、オークションに出品する方法。
著者がデジカメやパソコンが高く売れた実例を挙げているのですが、データが2005年ではいくらなんでも古すぎです。
それに近年のデジカメの価格の下落の幅は大きく、完成された新製品が次々と発売されるため、
「ヤフーオークション」での落札金額が「最安値」というケースが非常に多い!
つまり、ヤフーオークションよりも安く仕入れられることなどほとんどないと思われます。
著者は「在庫を抱えず、1回の仕入れ金額は2〜3万円に抑えなさい」と述べています。
ですが、その価格帯では3,000円の利益を得るだけの仕入先を探すのがまず困難であるということ。
ヤフーオークションの落札相場よりも安く仕入れられる先ってどこよ?という疑問がまず挙がります。
価格が小さいということは利益の幅も小さいということ。
まず最初の1歩で大きく苦労するだろうということです。
確かに金額がある程度貯まってきて大きな金額の商品を仕入れられれば利益幅は大きくはなるでしょうが、
そこに至るまでの「試行錯誤」で挫折する可能性も高いです。
とりあえず著者と同じ最初の自己資金300万円が当面の目標でしょう。
オークションの転売事業が不動産投資以前に軌道に乗らないと、次に進めないということです。
なので、最初で苦労すると覚悟しましょう。
物件購入以前に別の事業をする必要があると説く本になります。
そして不動産投資はその転売事業が成功して自己資金が貯まった事が大前提で語られます。
著者も最初は地元の山梨で利回り30%を超えるような区分所有物件を買いました。
しかし、すぐに区分所有ではいつまで経ってもお金が貯まっていかないと気が付いて一棟物件購入へとシフトしていきます。
著者はよく知っているエリアということで地元周辺の山梨県で利回り15%以上の物件をひとつの目安として探しています。
さらには入れ替わる可能性が単身入居者よりも低いということで、間取りは2DK以上のファミリータイプとしました。
著者も物件購入は融資を受けて買うため、一応は「土地・建物の積算価格」の計算法を書き出し、それを重視しているという記述はあります。
只、私が普段お会いする投資家の皆様が「物件の残耐用年数25年以上」をひとつの目安で見ているのに対して、著者は
「木造物件なら残耐用年数10年以上、その他の構造は15年以上」
という目安を書いていて、随分と「緩いな」という印象です。
理由としては
・地方物件で価格が数千万円かつ利回りが15%を超える様な物件ばかりのため、短期の返済期間でも十分に利益が出ると思われる点
・買い付けの際にいずれの物件も売り出し価格から15〜25%の指値を入れて購入しているため、利回りが15%以上からさらに向上している点
・基本的に物件価格の1〜2割の自己資金を入れており、フルローンでの購入はしていない点
などが挙げられると思います。
よって物件構造も「RCでないとダメ」というようなこともなく、事実として4棟購入したうちの半分は「軽量鉄骨造」の物件になっています。
この著者の投資法は
・RCマンション一棟積算価格高いもので億単位の融資を引こう派
・格安アパート一棟・戸建現金買い付けでリフォーム後に高利回り派
という現在の不動産投資業界の2極の「ちょうど中間」というような印象を受けました。
良くいえば「両者のいいとこ取り」、悪く言えば「どっち付かず」何よりもリフォーム費用だとか、管理費とか募集費用だとかの経費さえも
「別事業で平行してやっているオークション事業で稼いで払えば大丈夫!」と言ってしまっているのは凄いです。
前提が別事業の成功の上での不動産投資なので、眉唾が他の投資本よりも大きいのが難点。果たしてあなたは信じる?