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特に「いさま屋と出会った朱美」が魅力的。いい女だなぁ、と女の眼から見ても思った。枯れたいさま屋でなくてもほれ込むこと確実。(ちなみに彼女は「塗り仏」でも活躍し、いい女っぷりを見せている)
今作でも残虐な殺人事件は起こされるわけだが、そのいきさつがあまりにも悲しい行き違いによるものであり、また「魍魎」に比べて筆から凄惨さの色を薄めているように思われ、後に不快な嫌みが残らない。
「宇田川朱美」の沈む髑髏の夢の描写は秀逸だった。この夢から始まって、次第に壊れてゆく彼女の姿は痛ましく、また切ない。
後半に至って知らされる、ある宗教の存在が彼女の業の原点であると明らかになって、その悲しさがいよいよ募る。
望んだわけでもないのに、彼女の人生のこの帰結は一体誰の罪か。
大願を果たしえず死を選んだ女たちにもその哀しみはかぶる。
が、多くのやりきれない悲しみを包み込んでエンディングは奇妙に清々しい。
「朱美」という女に描き出された不可思議な違和感に気づいた読者ならば、この終結はある程度予想がつくと思われるが、京極堂の手際はいつもながら鮮やか。麻の如く乱れた糸を解きほぐし、一人ずつ「落として」ゆく筆さばきはさすがと言える。若干強引な点もいつものことであるが、基本的に京極堂シリーズは謎解きが眼目ではないので良しとする。
なお、この作品を読むに当たって、軽く精神分析関連の本、及び古事記神代記はさらっておいた方がいいと思う。まるきり知識がないと、入り口で取っ付きが悪くてせっかくの本文を楽しめない恐れがあるかと。
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