犯罪心理学の本にかいてあるのは、事例とそれを事後的に解説した本が多い。たとえば、少年の非行の事例が書いてあってそのあとに家族関係の問題がこのような犯罪を引き起こしたのだ、みたいなことが書いてあるのがふつうである。しかし、こういう解説で、本当に犯罪者の心がわかるのかというとどうも違うような印象を受ける。また、そこに書かれているのは、それを書いた犯罪心理学者や犯罪精神医学者の思想にすぎないようにも思われる。実際の犯罪現象を知るためには、彼らの思想がどうかという問題よりは犯罪心理学を学問としてとらえ、いったいきちんとした学問の成果がどのようになっているのかをまず、知る必要がある。じつはこのような観点から書かれた本はきわめて少ない。その中でこの本は犯罪心理学の様々な領域について手堅く紹介したものとしてたかく評価できる。ただ、一般に普通の人が犯罪について知りたいと思っていること、具体的には、「なぜ、人を殺すのか」みたいな話に答えが出るかというとそうではない。しかし、これはこの本の問題でなく、むしろ、犯罪心理学という学問の問題なのであろう。