本作はただでさえ短い若松作品の中でも短い部類に属し、別映画撮影のついでにスタッフ・女優を使い回し、旅館に3日半籠もって撮ったという「さすが!」のゲリラ映画です。新聞の小さな記事から想像を広げて作ったのが本作なのですからこれはもう若松イズム全開。「これぞ若松映画」と未見者に紹介する時の絶好のテキストです。その年の『映画芸術』第5位に選ばれたのも故あることです。
映画本編は唐十郎meets若松孝二という世界観に彩られていて圧倒されます。新宿を徘徊する唐十郎とヌードのフラッシュバックに取り巻かれる幻想的な冒頭。この時点で美少年の性的オブセッションと想念の中の物語であることが暗示されます。そして銃を撃つという行為は実際には出来ぬ射精の代償行為。『タクシー・ドライバー』のトラビスと同じで、この美少年もレズビアン行為を見ても嫌悪感しか持てず、性交を促されても何も出来ません。そして膣内に本当に銃を突き刺し発砲≒射精します。彼のオブセッションはここで解き放たれ、猟奇的な行為に走りサディスティックに女をカミソリで切り刻んで「天使」を造形、そして女を口汚く罵り…。
少女は「なぜあなた自身の血を流さないの」と難詰しますが、極めて状況劇場的なこの台詞は同時に彼が殺人者になったその理由を最も如実に示すものです。しかし彼が帰ることの出来たのは母なる海辺の光景。彼は海に向かい発砲≒射精し、裸の少女と初めて笑顔で戯れ、最後に彼は少女の膝枕で胎児の様に眠るのです。でも最後のパートカラーのシーン、彼女は消えており、少女は結局は彼の妄念の中の「理想の女性・アニマ」でしかなかったことが示唆されて終わるのです。彼に迫っているものは機動隊とこの世の喧噪。まさに時代を切り取った作品。迫力あります。あの頃の空気感を知りたい人には必見です。
〈追伸〉少女役の夏純子はデビュー作。まだ坂本道子名義でこれはレアな作品です。