この本は著者が学者だからこその価値があります。
飼主が愛犬とどのように向き合うべきか書かれた本は多数世に存在しますが、殆どは犬を良い方向に導く事を前提に活動されている方々が経験を元に著されたものです。
これらの著作と本書の大きな違いは、ある意味生体実験と呼んでも良い多くの研究とその成果に基づいた事実を根拠に理論展開している事です。
例えば、育成過程や教育課程において、あえてその個体やグループに特定の経験をさせない事で犬の行動にどんな影響が出るのかといった、目の前の飼犬やクライアントの犬を向上させようという枠組みの中では絶対出来ない事から得られた成果を元にしているわけです。
これは、一部の奉仕者ではなく人と犬全体に成果を提供する研究者だからこそ可能で、また許される行為です。
こうした特別な方法で得た情報から、経験則で語られてきた犬との接し方に合理的な解釈を試みています。
一部、我が国の犬に対する接し方愛し方の常識とかけ離れた、欧米ならではの家畜としての犬観が登場し、読み手によってはショッキングに感じる記述があるかもしれませんが、論文調の文章が苦手で無い飼い主は是非お読みいただきたい。
犬と接する中で絶えず湧いてくる疑問に、少なからず答えを出してくれるはずです。