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犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書)
 
 

犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書) [新書]

高橋 哲哉
5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容説明

『靖国問題』以来6年ぶりの書き下ろし新書
経済成長のネガとしての福島原発、安全保障の代償としての沖縄米軍基地…。共同体全体の利益のために、少数者の犠牲を正当化する論理を、いかに超えるか? 福島生まれの哲学者による緊急出版!


内容(「BOOK」データベースより)

福島の原発事故は、原発推進政策に潜む「犠牲」のありかを暴露し、沖縄の普天間基地問題は、日米安保体制における「犠牲」のありかを示した。もはや誰も「知らなかった」とは言えない。沖縄も福島も、中央政治の大問題となり、「国民的」規模で可視化されたのだから―。経済成長や安全保障といった共同体全体の利益のために、誰かを「犠牲」にするシステムは正当化できるのか?福島第一原発事故で警戒区域となった富岡町などで幼少期を過ごした哲学者による、緊急書き下ろし。

登録情報

  • 新書: 224ページ
  • 出版社: 集英社 (2012/1/17)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4087206254
  • ISBN-13: 978-4087206258
  • 発売日: 2012/1/17
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.8 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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 福島の人びとは、日本国家のエネルギー政策、そこから利益を得る人々、東京電力、東京電力からの電力によって快適な生活をする消費者、都市住民の犠牲となって、町や土地や共同体や平和な生活を破壊されてしまいました。

 沖縄の人びとは、土地を戦場とされ、敗戦後も、基地と軍人にいすわられ、アメリカ政府と日本政府の利益のために、経済、生活、共同体、未来、希望などにおいて、巨大な規模の抑圧を受け続けてきました。

 「「軍国主義」も「原発主義」も、莫大な国費を投入して推進された国策であり、「不敗神話」や「安全神話」をつくり上げて一切の異論を排除し、「大本営発表」によって国民を欺き続けた挙句、破綻したという点で実によく似ている。わたしの言葉で言えば、軍国主義とはすなわちヤスクニという犠牲のシステムであり、原発主義とはすなわち原発という犠牲のシステムであった。」(p.72)

 著者はさらに「8・15が軍国主義とその犠牲のシステムが破綻した敗戦の日であるとすれば、3・11は原発主義とその犠牲のシステムが破綻した「第二の敗戦」の日である」(同)と述べています。

 本書は、福島の人びとが今回の事故以前から事故以後にわたって日本のエネルギー政策と経済発展の犠牲とされ、沖縄の人びとが日米の軍事政策の犠牲とされてきた経緯をコンパクトにまとめています。これらの問題についての関心を持ち始めた人には適切な整理を提供してくれることでしょう。

 その上で、「責任者の遁走を許さず、犠牲のシステムの延命を阻止すると同時に、国民自身もそれぞれの責任を自覚して、犠牲のシステムに頼らない新たな社会の構築をめざすこと、これである」(p.72)、「だれにも犠牲を引き受ける覚悟がなく、だれかに犠牲を押しつける権利もないとしたら、在日米軍基地についても原発についても、それを受け入れ、推進してきた国策そのものを見直すしかないのではないか」(p.216)と結んでいます。

 ちなみに、本書では天罰論についての批評が展開されていますが、内村鑑三のそれについてのところなどを読んでいますと、イエスを供犠とみなすキリスト教の贖罪論が災害の被害者をもそのような文脈においてしまうことに気がつかされます。
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10 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By キキ
福島と沖縄を、「犠牲のシステム」というフレームの中で一緒に論じていいのだろうか?
……これが、この本を見た瞬間、私が抱いた違和感でした。

ところが、いざ読み始めてみると、一つの肉声を聴くようにすんなり読めました。
違和感が消えたのは、著者が福島県出身であるということも一役買っているのでしょう。

本書の約三分の一を占める沖縄についての論考では、特に予備知識がなくても、理解できるように配慮されています。
基地問題の歴史的な経緯や問題点がわかりやすく説明されています。

原発問題の論考では、マスコミがほとんどふれない司法の責任についても書かれています。
最高裁の判事まで原発企業に天下っているとは……原子力ムラの隠された実態をまた一つ見せられた思いです。

思わず冷水を浴びせられた気持になったのが、横須賀に米軍の原子力空母ジョージ・ワシントンが寄港しているという話です。
東京湾には原発が2基あるのと同じだ、と著者は指摘していますが、この事実は、ほとんどの日本人が知らないのではないでしょうか。

高橋哲哉氏は、福島と沖縄は犠牲のシステムであり、差別の構造である、と述べています。
この「犠牲のシステム」には、犠牲にする者と犠牲にされる者とがいる。
「犠牲のシステムでは、或る者(たち)の利益が、他のもの(たち)の生活(生命、健康、日常、財産、尊厳、希望等々)を犠牲にして生み出され、維持される。犠牲にする者の利益は、犠牲にされるものの犠牲なしには生み出されないし、維持されない。この犠牲は、通常、隠されているか、共同体(国家、国民、社会、企業等々)にとっての『尊い犠牲』として美化され、正当化されている」
(このフレーズはp.42をはじめ、何度かくりかえされている)

著者は2つの注釈をつけています(以下は、本書から私がまとめたものです)。

その1つは、この構造は、全く同じというわけではなく、両者には明らかな違いがあるという点。
「銃剣とブルドーザー」で建設され、そのまま居座り続ける米軍基地と、立地自治体からの誘致を前提とする原発とは同じではありえない。
もう1つは、本書でいう「福島」とは、福島一県ではないという点。
「福島」はあくまでも集中的に原発が建設された県(地域)の表象であり、新潟、福井、青森なども「福島」という概念で捉えられる、ということです。

「問題は、しかし、誰が犠牲になるのか、ということではない。犠牲のシステムそのものをやめること、これが肝心なのだ」
と、著者は主張しています。

国家にとって、犠牲は"必要悪"なのかもしれません。現実には、犠牲というものは避けられないものでしょう。
仮にそうだとしても、「システムとしての犠牲」は避けなければならないし、それを超えたところにしか人類の未来はないのではないか……
これは、本書を読みながら、よぎった感想です。

この本は私にとって、思考を鍛え、整理する一助になりました(3・11以降、一時、私は思考停止に陥りました)。
昨年は、日本人の多くが腰を落ち着けて物事を考える余裕を失っていたのではないでしょうか。
2012年は、本書のような、歴史的、哲学的に問う書籍も求められるのではないか、と個人的には思います。
このレビューは参考になりましたか?
5 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
高橋哲哉『犠牲のシステム 福島・沖縄』(集英社新書)は誰かを犠牲にして成り立つ戦後日本社会の欺瞞を暴く新書である。著者は東京大学大学院総合文化研究科の教授である。福島第一原発事故で警戒区域となった富岡町などで幼少期を過ごしたという。『逆光のロゴス』『記憶のエチカ』などの著書がある。

『犠牲のシステム』は原子力発電所も沖縄の米軍基地も犠牲のシステムとして位置付ける。「犠牲のシステムでは、在る者(たち)の利益が、他のもの(たち)の生活(生命、健康、日常、財産、尊厳、希望等々)を犠牲にして生み出され、維持される。犠牲にする者の利益は、犠牲にされるものの犠牲なしには生み出されないし、維持されない」と指摘する。

本書は米軍基地を抱える沖縄と原発事故を抱える福島から犠牲のシステムを可視化するが、戦後日本のあらゆる場面で存在する。東急不動産(販売代理:東急リバブル)が不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りした東急不動産だまし売り裁判も犠牲のシステムである(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。

東京都世田谷区玉川の再開発・二子玉川ライズに数百億円の税金が投入され、近隣住民が風害や日照被害で苦しむ一方で、東急電鉄・東急不動産らが経済的利益を得る構図も犠牲のシステムである(林田力『二子玉川ライズ反対運動』マイブックル)。

重要な点は「犠牲にする者」と「犠牲にされるもの」は非対称であることである。「犠牲にする者」は一方的に利益を得るだけであり、「犠牲にされるもの」は一方的に犠牲を受けるだけである。東急不動産だまし売り裁判では不利益事実を隠したマンションだまし売りによって東急リバブル東急不動産は利益を得る。東急不動産だまし売り被害者は屑物件を抱える損害のみである。二子玉川ライズでは東急電鉄・東急不動産らが開発利益を得て、住民は環境破壊の被害のみを受ける。

それ故に「経済成長や安全保障といった共同体全体の利益のために、誰かを『犠牲』にするシステムは正当化できるのか」という問題提起はミスリーディングに陥る危険がある。経済成長や安全保障として定立されるメリットは「犠牲にする者」だけの利益であって、「犠牲にされるもの」を含む共同体全体の利益とは限らない。

米軍基地にしても原発にしても「誰かが犠牲にならなければならない問題」と定義されてしまうと閉塞してしまう。それは普天間基地移転の迷走が象徴する。その時点で犠牲のシステムの罠に陥ってしまう。
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