内容紹介
特集「保育園・幼稚園」
保育園・幼稚園は、小さな子供たちにとっては、家庭とともに彼らの「世界」の大きな部分を占め、その「世界」を理解していく上で大きな役割を果たします。このことだけ考えても、建築家の役割は、制約の多さにもかかわらず、とても大きいものがあります。
この特集では、ドイツ、イタリアなどヨーロッパと日本の7カ国のさまざまな建築的提案を実現している11の施設を収録。このうちオーストリアのインスブルックの幼稚園と日本のふじようちえんは、12~13頁を割いて詳細に紹介しています。
連載「VANGUARD OF ARCHITECTURE」の第2回では、乾久美子さんにインタビュー。
このごろ、商業建築のファサードから住宅とオフィスビルなどの建築へと仕事がシフトしている乾さんの斬新な建築デザインの考え方についてつっこんで質問しました。これからの建築の行方を考える上でとても示唆的な内容となっています。
連載第1回で登場いただいた藤本壮介さんからのお手紙(質問状)とそれに対する乾さんのレスポンスも収録。ほかではなかなか見れない建築デザインの根っこの部分についての作家同士の対話にもご注目ください。
もうひとつの連載「Bringing out the Project」の第2回では手塚貴晴さんと
角舘政英さんの対談を収録しました。
メディア掲載レビュー
◇Process[ふじようちえん、インスブルックの幼稚園]【★★★★☆】 今号は保育園・幼稚園をテーマに掲げている。ヨーロッパの事例9件を紹介した後、「Process」というコーナーで2つの幼稚園を並べた。 今年の学会賞を受賞した「ふじようちえん」は、DETAIL JAPANでも2007年10月号で既に紹介済みだ。 前回は日本版オリジナル記事として登場。今回は、DETAIL本誌で掲載された記事を載せるという逆輸入バージョンになっている。記事では、発注者である加藤積一園長へのインタビューを載せているのが珍しい。 もう1つの「インスブルックの幼稚園」(設計:フレッチャー・リヒテンヴァーグナー)は、幼稚園と就学児童用ケアセンターを備えた複合施設の計画だ。細長く延びる低層棟に、中廊下をはさんでオープンな部屋が並んでいる。 通りかかる人の視線を感じられるようにした設計は、子供たちに「地域への帰属意識を教えること」を意図しているという。ヨーロッパ的な考え方を感じさせる一文ではないか。 また、園児や親、市会議員、園長、ケアセンター長のインタビューもある。「入口のキャタピラーだってチョーサイコー」(5歳児)という翻訳への感想はさておき、興味深かったのは、園長とケアセンター長の談話だった。 ガラス壁を用いた開放的なプランニングに対する評価が対照的だ。「(やって来た親が)窓を覗けば子供をグループ室から連れ出しても大丈夫か、それとももう少し待つべきかが分かる」と好評価を下すのは園長。かたやケアセンター長は、「比較的簡単に(子供たちの)気が散ってしまう」点を指摘する。 子供の年齢によっても評価は異なるのかもしれない。いずれにせよ、利用者の様々な意見を聞けるのは有益だ。 ◇連載[Bringing out the Project/手塚貴晴×角舘政英]【★★★★☆】 生活を語る光 こちらも連載の第2回目。今回は「“コラボ”から知るプロジェクトのディテール」という副題が付いた。なるほど、コラボレーションに焦点を当てた記事だという狙いがよく分かる。 登場するのは、手塚貴晴さんと照明家の角舘政英さん。「屋根の家」(2001年)、「ふじようちえん」などを通して、建築空間における光の在り方や、それを実現するための監理などについて語り合う。 「あかりというのは、人の営みが伴う言葉なんだ。あかりというったときには、だれか灯す人がいて、そこにひとつドラマが生まれる」と手塚さん。角舘さんは、「何で夜景が美しいかといったら、夜景に人の営みを感じるからだと思うんですよ」と加える。 そして、ひとしきり裸電球の温かみについての談義へ。 ただし残念ながら、環境配慮という目的の下、裸電球は切り捨てられようとしている。電気の無駄遣いを防ぐ必要はあるが、もう少し複眼的な視点から選択肢を残す方法は考えられないものだろうか。 [今号の評者、建築&住宅メディア研究会 守山久子] --建築雑誌オールレビュー 2008/07/11