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お涙頂戴で戦争の悲惨さを伝えたり、ある主義を掲げることはありません。いつの時代でも、自分の生き方に思い悩み、ぶつかり、挑戦する人の姿があります。この時代の職業、家族、地域社会、軍隊制度など、細かい情報には、新しいものもありました。戦争や歴史、社会学や民俗学、特に陸軍航空隊特攻に関する資料になるものです。
生活観ある記述なので、のどかな雰囲気も伝わってきますが、戦時中だからといって人間が緊張しっぱなしでは生きていけない証拠かと思います。
主人公の房雄氏は、左官業→陸軍(歩兵→下士官→隊長)→陸軍航空隊(特攻任務誘導)へと渡り歩きます。この時代で特殊なキャリア形成かどうかはそれ程多くの資料を読んだ訳ではないのでわかりません。この時代が、必死で特定分野の人材を求めていた背景も手伝ったかもしれませんが、彼は持ち前の才能や性格を活用して、タイミングよく、要領よく、キャリアを形成していきます。親方に騙されたり、軍隊で得た特権に喜んだり、愚直にひたむきな姿も、面白いです。
若干残念なのは、軍事用語や学制、満州などに関する注や地図がないことです。ただ、簡単に手に入る部類かと思うので、あまり気にする必要はないかもしれません。
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