東宝撮影所における、いわゆる「円谷組」が決して一枚岩ではなく、井上泰幸が円谷英二らと衝突を繰り返して初めて東宝特撮映画の名作群が誕生した事をこのノンフィクションは語っている。
「真に観客が観たいものは何か」を円谷以上に考え抜き、現場のリーダーとして信念を貫いて率先して手を動かし続ける井上の姿は「仕事とは何か」を読む者に考えさせる。
円谷の死後、東宝を離れる際に退職金ももらえない、実は契約社員でしかなかった井上泰幸が何故実質的に東宝特撮の現場監督として現場を支える事が出来たのか?彼に有って、東宝の正社員スタッフたちに無かったものは何なのか?過酷な運命にぶつかりつつも、「神様」とあがめられる円谷との衝突の中でこそ後世に残る作品を作ってきた井上のバイタリティ、経験を生かす力には学ぶものが多い。
かつて自分の左足を奪い、運命を変えさせたP51戦闘機と航空博物館で静かに対峙する井上。その姿に、限りなく大きな男の姿を読む人は感じる事が出来るであろう。