座談の方式を取っているので堅苦しい技術書や歴史書の類ではなく大変読み易い内容です。
役者は限りなく大道具に近いヌイグルミ俳優の中島春雄さんのみで、大道具、撮影、編集、光学合成、記録、事務等通常の特撮を扱った本では漏れてしまいがちであった縁の下の力持ちの方々の貴重な証言が満載されています。
当時の職人芸の凄まじさ(例:出来上がりイメージ図だけでミニチュアを楽々と作る技術者、指先だけでホースによる放水の加減を変えて暴風雨から小雨までを表現し分ける職人、あまりにも上手く造り過ぎてしまった為に遠くに飛んで行ってしまったラドンの模型,e.t.c) はもちろん、円谷英二さんを中心とし大家族の様に寝食を共にして苦楽を分かち合ったスタッフと全てを包括した日本映画全盛時の制作費だけでは量れない豊穣さが感じられます。
それだけに映画産業の斜陽化と共に長の円谷英二さんが亡くなった途端にこの組織があれよあれよと解体されてしまう様子の呆気無さには無常観を覚えました。
既に失われてしまった物の大きさに一抹の寂しさも感じますが語り口の暖かさから非常に読後感の良い作品です。特撮を愛する方には大いにお薦めです