本国デンマークで絶大な人気を獲得し今年日本とアメリカで紹介されて大きな反響を呼んでいる大人気警察小説シリーズ第2弾です。このシリーズはミステリー界ではこれまで全く注目されていなかったデンマークという国を、折からの北欧ミステリーブームにも乗ってか一気に世界クラスにまで押し上げたのですから真にたいした物だなと思います。著者近影の強面な印象通りに中心はハードバイオレンスの色濃い作風ですが、それだけでなくとぼけたユーモアが随所に盛り込まれている所が人気の要因なのでしょう。
コペンハーゲン警察に新設された未解決事件専門の部署「特捜部Q」が最初の事件の解決で意気が上がり今回挑むのは二十年前に起きた十代の兄妹殺害事件である。既に犯人の刑が確定しているのにどうして資料が回されて来たのか疑問を感じながらもカール・マーク警部補は相棒の変なシリア人アサドと新入りの癇に障る女ローセと共に事件の再捜査に着手する。
本作は犯人の正体も犯罪の全貌も最初からほぼ明かされていますので謎解きの興味は薄く、ミステリーとしての面白さは手掛かりを基にして犯人を一歩一歩追い詰めて行くドキュメンタリータッチの捜査過程の描写とクライマックスでの犯人達との対決の息詰まるサスペンスにあるのは前作と変わりません。唯一プロローグで描かれる逃げ惑う謎の人物の正体が終盤で明らかになるのが意表を突く面白さでしょう。特捜部Qの新入りローセは他署から移されて来た些か問題のある女性ですが有能で仕事はきっちりとこなしますので風変わりな環境と水が合えば今後も活躍が期待出来そうです。謎のシリア人アサドは相変わらず頓珍漢なやり取りばかりで困惑を招きますが時には良い息抜きにもなりますし、追い詰められた時に見せる常人離れのしぶとさは健在です。我らが主役のカールは入院中の元部下ハーディの件で心を悩ませながらも、心を魅かれる美人心理療法士モーナとの関係が前進しそうなのですが・・・・でもやはり人生そう上手く行きそうにはありませんね。そして何と言っても本書の肝は前作の強靭な奇跡の女ミレーデ・ルンゴーとは対極にあると言えるまさに死を呼ぶ災厄の女キニー・ラスンで、私にはあの「ミレニアム3部作」の異端のヒロイン、リスベット・サランデルをもその凄まじい強烈な個性で超えていると思えます。リスベットは心にまだ善意を残した女であるのに対してキニーは狂気を心に宿した常人の理解の及ばぬ女で、動物狩りで獣性を発散する人でなしのエリートの男どもの存在感をもかすませてしまう危険な人物ですが、その親の愛情に見放された幸薄い境遇を思うと可哀そうでどうにも憎めませんし、彼女の才能が善の方向で発揮されなかった事が誠に惜しまれてなりません。
本書を読んで謎解き興味を二の次にしてもこんなに面白い小説が書けるのかと現代ミステリーの形を改めて認識した次第で、向かう所敵無しに思える著者の今後の活躍に期待しシリーズの次回作の紹介を心待ちにしたいと思います。