「経済思想の多様性」を主軸に「現代経済学」を綴った読み物。著者は、
アメリカ型の経済学教育の導入による経済学の一元化が進み、自由な思考
にとって最も貴重な「多様性」が失われているという危機意識から、本書
を書いたそうです。
本書では、現代経済学の黎明期からの歴史やノーベル経済学賞の光陰と、
幅広いテーマで記述があります。その中で、特に印象に残ったのは、以下
の3点。
フリードマンの「レッセ・フェール」の経済哲学
『政府による統制活動が大幅に増大してきたのは、善意に満ち満ちた人々
が、社会のために善いことをしようとした結果、生み出されてきたのです。
これらの人々は善いことを達成するのに、自分たち自身のお金によってで
はなく、他人のお金でやろうとしたことに問題があったのです。このやり
方の欠点は二つあります。第一は、人々が他人のお金を自分のお金ほど注
意深く使うことを期待するのは不可能であること。第二は、他人のお金に
依存しようとするかぎり、結局は権力ないし警察力を行使しなくてはなら
なくなることです』
ブキャナンとワーグナーによるケインズ批判
『ケインズ経済学は、増税なしにどんどん歳出を増やしたいという、あら
ゆる政治家が持っている欲求に対する効果的な歯止めをなくし、政治家を
しまりなくさせてしまったのである。』
ガルブレイスの「満ち足りた選挙多数派」の考え方
『彼ら(満ち足りた選挙多数派)は、デモクラシーという装いのもとに支
配するが、そのデモクラシーには、恵まれていない人々は参加していない
のである。満足せる人々は決して黙ってはいない。彼らは自分たちの自己
満足状態を侵しそうなものに対しては、はっきりと怒りを示す。』そして、
近年における保守主義の復活は、リベラリズムからの一時的な「逸脱」で
はなく、「ゆたかさ」の結果として生じた必然となる。
最近の流行本には載っていない思想に出会える本です。