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物語論で読む村上春樹と宮崎駿  ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21)
 
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物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21) [新書]

大塚 英志
5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

明治期の近代文学のはじめから村上春樹、宮崎駿の『崖の上のポニョ』まで、なぜ登場する男の子はみんないつまでたっても子供のままなのか?日本文学に通底する男たちの「甘えの構造」を鋭く分析した刺激的な評論集。

内容(「BOOK」データベースより)

暴走する「物語メーカー」に「欠損した私」を委ねてはいけない。少なくとも「構造しかない」物語にこの国全体が「とてつもない日本」という空虚な意味を補填し、日本が世界に届いたと思い込むことだけは止めた方がいい。何も届いていないし、届けてしまってはいけないのである。9・11はアメリカ、ないしはブッシュという「物語メーカー」の暴走としてあり、そこに日本人は「欠損した私」を委ねてしまったことは忘れてはならない。

登録情報

  • 新書: 253ページ
  • 出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009/7/10)
  • ISBN-10: 4047101990
  • ISBN-13: 978-4047101999
  • 発売日: 2009/7/10
  • 商品の寸法: 17.2 x 11 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 2.0 著者のパーソナリティがひとつの重要な能力であることに気づかされる, 2011/10/10
By 
落鳳坡 (益州) - レビューをすべて見る
(トップ1000レビュアー)   
レビュー対象商品: 物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21) (新書)
不思議な本だった。
物語の構造について詳細な解説を行うという有益な分析を提示したことに強い敬意を払った上でも、こんな評価をつけざるを得なかった。

著者が村上・宮崎の両氏に怒る理由がよくわからない。
この神話的物語構造論で両氏の物語を解析し、テーマのみを抽出すれば、残るのは「その道がどんな道であろうとも、理想に向かってやり直し続けるのだ」という日本的な理想への追随に集約されるだろう。
このテーマはその社会に対する是非はともかく、その社会に生きる人間の倫理や理性に敬意を払う意識を有していれば、その深さの差への不満はあれど否定する必要はない。だが、そのテーマそのものに対して怒るとすれば、結局著者は日本文化〜文学が積み上げてきた普遍性が持つ宗教的とも言える帰属性を全否定しているということになる。
これは著者が社会の精神に対する解体主義者であり、アナキストであることを宣言しているようなものだが、これを自分がマイノリティかつ社会が守ろうとする精神性に対するテロリストに近い存在であると認識していないところに、著者の表現者としての限界があるように思う。
その形に違いがあっても、社会に建設的なヒントを与えようと努力する人間とそれをあげつらってあざ笑うような2ちゃんねらーの延長的精神の人間のどちらが好感を持たれるかなど、語る以前の自明の理だと言えはしないだろうか。
礼儀正しく抑えた口調であるにも関わらず、エンターテイナーとしてのパーソナリティが村上・宮崎に比べて未熟なのではないかと思える部分が露呈しているし、その思想自体が社会に受け入れられにくいものであるという明確な違いを著者は認めていない。
いくら物語で粉飾しても、アナキスト的な思想を安易に受け入れるほど大衆はバカではないのではないか。

また、それらの解析と批判に反して、その対案となるべき自己の主張する思想についての根拠が村上・宮崎の両氏の対極を示すものとしてはどうも貧弱すぎる。
神話・民俗学の知識を源流として近代日本社会とその精神性の集約化を批判する思想を展開するのだが、その論理は社会に対する帰属性、還元性が非常に薄く、主観・直感的な気づきをむりやり類型化して押し通すものでしかない。例えば中国や韓国の現代文学を読むと、その日本への嫉妬や憎悪の果てに近代日本、そして日本の精神性そのものに対する切ないまでの羨望があることがわかるのだが、著者の主張がその羨望を否定しきるまでに日本の社会の暗部を正確に捉えているとは思えない。物語の拡散性を語るのに、宗教観や国家観という神話以外の価値観を一切無視するのはかなりまずいことではないのか。
何よりも、自分が物語を使って自分の思想を曲げずに語ることを貫けているという恩恵に浸っておきながら、その恩恵を同じように使っている人間を「思想が幼稚で気に入らない」とばっさり切るというのはどうだろうか。
身も蓋もなく言ってしまえば持たざる者の持てる者への嫉妬であり、精神的な不細工の精神的ハンサムへのやっかみと言われても仕方がない。
村上・宮崎両氏がお子様理想主義者であるのならば、著者はお子様アナキストなのではないか。

結局、著者は売れる私小説とでも言えるような物語を数学的に作ることを理想とするのだろう。しかし、肝心の本書の理論が2ch的なやっかみの延長にしかなっていない。
「あいつら売れてるけど、決められたルールの中で調子よくやってるだけにすぎないんだよ」という主張を同じようにルールにぶら下がることで語るという、相手の足を巧妙に引っ張る本で終わっている。中身以上に語り口の悪質さがメインの本なのだ。
学者としては中途半端どころかお話にならない論旨であるし、物語構造への考察が優れている分、かえって読者に著者のテーマのまずさを伝える結果になっていはしないかと思えてしまう。
これならば証拠の提示やその分析はお粗末でも、論旨に近代日本文学が掲げてきた使命感を(その表現方法はどうあれ)受け継ごうとしている小谷野敦氏などの方が、遥かに読者の心に建設的な主張として映るのではないか。
個人的には本書を読んで、パンク的な衝動を表現する純芸術としての私小説の素晴らしさを再発見してしまうなど、著者の狙いの逆を行く結果が起ったのが印象に残った。
やっぱり人間的に爽やかな人物の方が、陰湿な人物よりも大勢に受け入れられるのだ。
著者が効果として狙うプロパガンダへの解毒剤というよりも、単純に読み手に不安と不快感をあおる劇薬としての形をなす結果になっているのが非常に残念である。
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33 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 春樹論、ここに完結??(最新作『1Q84』の読解も最後に所収), 2009/7/22
By 
倒錯委員長 "今田祐介" (横浜市と夢半ば) - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー)   
レビュー対象商品: 物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21) (新書)
本書は批評家柄谷行人のある指摘を受けての著者が、村上春樹に代表されるサブカルチャー文学や、宮崎駿に代表されるジャパニメーションの汎世界化(世界的に評価されること)という現在進行形の潮流を、批判的に考察していく。

それら作品がなぜ汎世界化したか、ということについての柄谷の見解は「構造しかないから」というもの。この指摘は素人目に見ても画期的だと思われる。普通われわれは、村上や宮崎といった汎世界化した作家に、他のドメスティックな作家には「ないなにか」を見出そうとする。だが柄谷の論からすれば、事態は全く逆なのだ。村上作品や宮崎作品は、何か類い希なる「固有性」によって評価されたのではない。構造以外をそぎ落としてクリアカットされているからこそ、世界的名声を勝ち得たというわけだ。いや、届きやすくなったといってもいいのかもしれない。

本書で大塚はその論考をさらに発展させ、ジョセフ・キャンベル『単一神話論』を手がかりに村上作品、宮崎作品に通奏低音する普遍的な神話の構造を辿る。

なるほど興味深いし、数ある春樹論の中でも本書は随一のインパクトを持つと、僕は思う。しかし、一つ二つ気になることがある。
一つは素朴な疑問ではあるが、では未だ汎世界化されていない作品というのはどうなっているのか、ということ。つまり「構造しかない」作品以外の作品は、「構造以外」にいったい何をを有しているから、世界的な評価を受けないのか。
そしてもう一点、村上作品での世界での広範囲の受容は「構造しかないから」で説明できるだろうが、日本における受容というのは果たしてどうだろうか。日本においては、あの村上春樹特有の「文体」について考察されるべきだと思うが、本書ではあくまで構造にのみ焦点を当てている。それに関しては、大塚でも本書より以前上梓した『サブカルチャー文学論』に詳しいので、そちらもあわせて読むべきかもしれない。
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32 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 物語から身を守るためのリテラシー, 2009/7/25
レビュー対象商品: 物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21) (新書)
ジョージ・ルーカスはジョセフ・キャンベルの神話理論を参考にして『スターウォーズ』を作った。
ハリウッドはそれをマニュアル化した。
かくして、その気になれば誰でも「物語メーカー」になれる時代が到来した。

本書は、村上春樹と宮崎駿の作品が、ルーカス/キャンベル的な物語構造の換骨奪胎であることを明らかにするとともに、そのような構造だけの「ジャンク」にありもしない意味を充填する行為を諌めた本である。
私は村上春樹や宮崎駿の作品が構造だけの空虚だとは思わないが、「物語メーカー」が自動的に産出したような簡便な物語に、欠損した主体を委ねてしまう風潮には、著者と同じく危機感を覚えている。

特に最近のサブカル界隈では「成熟」や「大人になること」が実存レベルの切実な問題としてクローズアップされているようだが、成熟の物語はどうしても「スターウォーズ」的になりがちだ。
そのような安易な成熟の物語は、オウムや9・11のような幼稚な自己実現の物語へと人々を動員する結果になりかねない。
成熟することは必要だが、成熟の物語を外部に求める短絡は避けねばなるまい。
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