チェコという国、はっきり言って我が国ではちょっとマイナー視されがちです。小生にとっては、「チェコスロヴァキア」という名前が耳に馴染んでおり、「チェコ」だけでは何かどうしても落ち着きの悪さを感じてしまいます。
他方、最近では、歴史の香る文化的観光地としてプラハが注目を集めているのだとか。確かに、この街は神聖ローマ帝国の首府として欧州の文化的中心にも位置付けられたこともある中欧屈指の名城です。とは言え、この国、この街は、いったいどんな過去を秘めているのでしょうか。
さて、本書ですが、中公新書の物語各国史シリーズの一冊として、中世初期以来のチェコの歩みを平易に説明するものです。この国の歴史、民族構成の多様性や周辺諸国との込み入った間柄などにより、ことのほか複雑なものがあるようですが、本書では、皇帝カレル4世やフスなどチェコ史に大きな足跡をのこした人物や、19世紀末の内国博覧会開催をめぐる民族間の紛糾といった具体的な事件に着目することにより、一般読者が興味をもって読み進められるよう工夫されています。チェコ史には全く土地勘のない小生にとって、出てくる人名・地名は殆ど馴染みのないものばかりですが、こうした趣向とテンポの良い語り口のおかげで、楽しく読むことができました。
チェコ史に造詣の深い向きには些か飽き足らないものがあるかも知れませんが、各国の歴史を「物語」として語るという本シリーズの趣旨に照らせば、本書は出色の出来栄えと言えるのではないでしょうか。また、チェコの歴史それ自体についてのみならず、広く中欧全体の歩みを概括的に理解していくという観点からも、然るべく参考になる本だと思います。