年をとるにつれ、いつのまにか、物語や小説を読む割合が減ってしまいました。
つい、分かりやすい社会事情の解説書や、ビジネス書、生活雑誌、実用書にばかり手が伸びて…。
でも、一方で、大人になっても物語を愛する人がたくさんいる人がいて、
なぜ、自分は物語から遠ざかってしまったのか、考えていました。
小川さんの作品は、『博士の愛した数式』しか読んだことがありませんでしたが、
瞬時に映像が明確に伝わり、やさしさ、ぬくもりのを感じさせる文章が、とても魅力的でした。
本書は、べつべつの3つの講演を元に編まれたものですが、
その小川さんが何を意図して物語を書こうとしておられるのか、芯にある姿勢をうかがい知ることができます。
また、幼ない頃、どのような本と出会い、作家へと至ったかも綴られています。
さらっと映画を見るぐらいの時間で読めるプリマー新書ですが、奥深く考えさせることの多いシリーズ。
本書も随所に、ぐっと引きつけられる言葉がちりばめられていて、作家の底力を見せつけられたりも。
「たとえば、非常に受け入れがたい困難な現実にぶつかったとき、
人間はほとんど無意識のうちに自分の心の形に合うようにその現実をいろいろ変形させ、
どうにかして現実を受け入れようとする。もうそこでひとつの物語を作っているわけです。
(中略)そういう意味でいえば、誰でも生きている限りは物語を必要としており、
物語に助けられながら、どうにか現実との折り合いをつけているのです」(p23)
これは、ほんの一部。
あとは、ぜひ、ご自分で探してみてください。