大塚英二氏のアスキー新書創作指南シリーズ第三弾。前二作品、キャラクターメイカーとストーリーメイカーによって物語を構造・形式的に読み解いていった氏の次の課題は、物語を貫く芯、「テーマ」をいかようにして創造するかという事だった。
物語のテーマは時代や対象によって様々に姿を変えていく。一方で、時代を経ても変わらないテーマもまた存在する。時の変化に左右されない、共通の苦しみや悲しみ、喜びや憎しみが存在するからだろう。本書ではそれを利用する事を勧めている。本書で解説されるのは(取り上げられる題材からもわかるように)思春期に通過儀礼的に生じる観念的問題をテーマとして置き換えている物が多い。それは、多くの人々が経験する共通項であり、そのために今だもって色あせない普遍的なテーマ性を持ち続けている。これを利用しない手はない、というわけだ。
その題目通り、本書は六つのテーマが上げられ、そのテーマの持つ意義と普遍性が語られる、という構造で仕上がっている。「テーマもまた「型」である」と作中で語るとおり、氏はこのテーマすらも、前二作と同じように構造化して、誰でも簡単に扱える物にしてしまった。その上でまた、オリジナリティも否定せず、借り物の(普遍的な)テーマを元に、発展していくその人独自の発想をオリジナリティと呼び、その必要性も(多少おざなりながら)語られている。
以上が本書の大まかな内容である。以下は個人的な感想なので、あまり参考にならないかも?
実際読み終わってみると、前作ストーリーメイカー程のセンセーショナルさは感じなかった。本書の要は前半で論じられる内容(上記の内容がそれだ)が全てで、後は取り上げたテーマをひたすら解説するだけだ。内容はおもしろいのだが、結局得られる事は少ない。大塚英二氏のいくつかの関連書を読み終えた人なら、どこかで聞いたような話ばかりでウンザリしてくるのではないだろうか。
氏は創作に関する講義を学生に施しているそうだが、どうもその学生達のモチベーションが低く、またテーマも自分で見つけられないような者が多いのではないか? そういった生徒を相手にした場合、本書は非常に有益であると思う。普遍的なテーマという確かな足がかりを与えれば、急速に自分の抱いていたテーマに気づき、昇華できる人はたくさんいるだろうからだ。
また、創作を志し、一貫したテーマも持ちつつも評価が得られない方も、一度だまされたと思って本書の上げるテーマを描いてみると、周囲の評価も変わってくるかも知れない。
一方で、創作のテーマすら与えてしまう氏のやり方は、過保護すぎやしないだろうかという懸念も、読んでいる内に浮かんでくる。テーマは作家が作品を作るモチベーションそのものであり、それをあっさり与えてしまうのは、作者をダメにする優しい虐待なんじゃないのかと勘ぐってしまう。いいのだろうか?
本書を読んだ結論としては、テーマすらもあえて型にはめてしまう、という発想は前作以上にセンセーショナルで大変おもしろい題材だと思うのだが、結局それだけで全て終ったので、ストーリーメイカーを超える衝撃は無かった、といった感じだ。もっとも、この発想自体は素晴らしいし、氏のオリジナリティの認識も市場と乖離しがちな作家の創作志向をつなぎ止める良い発想だと思う。物語のとらえ方の一つ、技法の一つとして、学んでおくのは十分に有益だと思う。
氏の創作技術の発想がどこまで上り詰めるか、今後も注目していきたい。