『百年の孤独』、『族長の秋』などで知られるラテンアメリカ文学の巨人ガルシア=マルケスは、映画脚本にも手を染めている。その彼がキューバにある映画学校で、脚本家やその卵、映画監督たちと交わした議論を活字化したのが本書。自在に交わされる対話を追ううち、読者は物語の誕生と変質という摩訶不思議な瞬間に立ち会うこととなる。
ディスカッションはおおむね次のように進行する。テレビドラマ化を念頭において、生徒ひとりひとりがストーリーを披露、これに対してガルシア=マルケス(愛称の「ガボ」で登場)やほかの人々が意見を述べ、検討を加える。このプロセスを経るうち、物語はしばしば思わぬ方向へ変化していく。たとえば、バイオリン奏者である夫の挙動に不審を抱く妻が、彼の正体はテロリストだと知るストーリーのはずが、ふとした拍子に彼女のほうがテロリストという設定になっている。または悲劇のつもりで進めていたラブストーリーが、いつの間にかコメディーとしてまとまることもある。
この議論を導き、精彩を与えるのはやはり「ガボ」である。提示された物語を糸口に独自のイメージをあふれさせ、惜しげもなく皆の前に投げ出す。かと思うとユーモアたっぷりに生徒を刺激し、ときには創作の本質に触れる言葉を口にする。巨人の存在感に今さらながら圧倒される思いだ。
この教室で議論され、練り上げられるのは単なる紙上のストーリーではない。まさに、生れ落ち、成長していく生きものなのだ。じつは、それこそが物語の本質と言えるのかもしれない。ガルシア=マルケスの愛読者のみならず、物語に魅かれるすべての人に本書は開かれている。そして人間に物語が与えられた喜びを、あらためてかみしめることになるだろう。(大滝浩太郎)
中でも字面を突然、生き生きとした映像として浮かび上がらせる、著者の発言に圧倒される。彼が自分を「天性の語り部」だと言うのもうなずける。
各参加者は独自の手法を持っており、簡単には自分の主張を譲らない。個性豊かな彼らのやり取りのお陰で、同書は物語の作り方のみならず、会議の進め方の指南書にもなっている。
(日経ビジネス 2002/03/18 Copyright2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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56 人中、51人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ストーリーテラーというものは・・・,
By アマゾン太郎 ( ) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室 (単行本)
ガルシア=マルケスの現実とも幻想ともつかない世界が好きで手にしてみましたが、小説ではなくシナリオの作り方でした。ガルシア=マルケスが開催するシナリオ教室の授業をもとにした本が既に三冊刊行されているそうで、そのうち二冊がこの訳書に収められています。教室の参加者にはすでにプロとして活躍している人も多く、ふだんはぼんやり見ている(読んでいる)だけのストーリーの背後に、どれほどの配慮が秘められているかに改めて驚嘆しました。ガルシア=マルケスが自らの小説(の制作過程)とシナリオを比較しているところも若干ありますので、小説のファンでも結構楽しめると思います。
42 人中、38人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ホントかよ、おい,
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レビュー対象商品: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室 (単行本)
この本は、ガブリエル・ガルシア=マルケスがリーダとなり、ブレーンストーミングっぽい形式で、ライター連中があーだ、こーだとシナリオをこさえていくワークショップの録音記録みたいなものなのだが、読んでいて、ラテンの作家連中ってのはこんなにポンポンとアイディアが出てくるものなのか? といった疑いの念が先行してしまった。まあ、そこはガブリエル・ガルシア=マルケスを取り巻く連中なので、そんなもんなのだろうと思い、一度読み終えた後、今度は紙と鉛筆を手に、この連中の中に参加できるかどうか、挑戦を試みた。 結果・・・惨敗。 誰かが話し出すアイディアをメモってイメージするだけでも膨大な量になってしまい、とても「イマジネーションをかき立てられる」だの「インスパイアされる」だのの状態にはほど遠く、進級/落第のかかった補習授業の板書メモ状態にしかならなかった。ま、それで当たり前なのだが。ただ読んで感心するだけでも面白いが、身の程知らずにも挑戦を試みて、砕け散る楽しみも味わえるということで、星5つ。
37 人中、33人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
ワークショップのクオリティはホストの力量次第。,
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レビュー対象商品: 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室 (単行本)
「物語の作り方」のケーススタディとして取り上げるなら可、
あるいは、 初稿を書き終えた後のチェックシートとして再読するなら可、 あるいは、 実作に取り組みたい人が前向きになれる後押しの書としてなら可、 一方で、 すぐ実践できる「物語の作り方」を知りたい人にとっては不可、 シナリオの書き方について知りたい人にとっては不可、 さらには、 ガルシア=マルケスの小説が好きな人にとっては可もなく不可もなく、 といったところでしょうか。 とはいえ、シナリオを書く上で肝に命じておきたい一家言も 随所に見られます。手許に置きたい1冊。
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