今となっては珍しくない金融業界の理系出身者だが、そのパイオニアとして著名な筆者による自伝的な内容。クォンツとしての人生を選択した筆者の悲哀と信念が、物理学と計量ファイナンスの歴史とともに語られていて非常に興味深い。 また、私もそうだが、物理を少し学んだ身からは、自然科学から離れて金融というドロドロとした世界に至るまでの過程は、前半と後半の対照的な世界観からも、その苦悩を包み隠さず語られている。 この本を読むまでは、クォンツや金融工学をかじったことがある人なら誰もが知ってるモデルの開発者としか筆者を見ていなかったが、研究者と実務者の狭間で揺れ動く人間的な心情や、数々の挫折など、アカデミックと実務の違いや、この世界で働くことの意味を考えさせられる。 理系で金融業界に就職しようと考えている学生は、日本語訳に多少難はあるものの、一度読んでおくとよいだろう。