物理学の歴史、力学の始めから量子論までその推移や定理・理論の外観、また関わった人たちについて順を追って語られている「物理の伝記」・「原子力の話」。著者の立場や行動について書かれた「わが世界線」。どちらも単なる教科書でも、エッセイでもない、ガモフ独特のウィットのきいた口調で語られる。数々の名著(ニュートンの『プリンキピア』、ガリレオの『天文対話』等々)からの抜粋も多く、その歴史的背景や人物についても著者の味付けがあって面白い。『トムキンス』シリーズと違って、誇張によるわかりやすさは無いが、ボーア、ラザフォード、アインシュタインといった物理学者と著者とのエピソード、時々はいる詩や寓話など、楽しさは変わらない。この本の良いところは、「物理は難しい」とか「物理は楽しい」などと声高に主張するのではなく、理論もエピソードも同じ比重で淡々と話されていること。それによって出てくる人物に興味を持ち、また「物理学ってのはこんな感じなんだな」と思えるからだ。本が出たのは昔だが、古いからと言って価値は落ちない。解釈や理論にずれがあっても、十分に楽しめる。物理を学ぶための入門書というのではないが、読めば物理学、そしてそれに携わる人たちのことを知る良い機会を与えてくれる。