東南アジアからインドまで、貧困の最下層といえる「物乞いをする障害者」のルポです。
それぞれの障害の特徴から厳しい貧困、戦争の傷跡、マフィア達の犯罪など、グロテスクな事実を次々と記していくものの、文体はいたって簡潔で無理に感傷的にはなりません。
事実を知ろうとする欲求は本書の随所に表れますが、その事実を独自の見解や主張へ発展させることには極めて禁欲的です。その姿勢には好感を持ちました。
つまり、この種のルポで安直な「アジアの過酷な現実を知らない平和な日本人」論が、現場に行き現実を見た者を特権的な立場にまつりあげてしまう危険性をよく自覚しているように思えます。
そんなところが77年生まれ、政治やイデオロギーから一歩距離を置くことができる世代の魅力なのだと思います。
タイトルや内容も含めて、辺見庸の『もの食う人びと』と比較されるかもしれませんが、各国の厳しい現実から逆に日本を照射しようとする意識はやや違うと感じます。本書は、「日本人は世界の現実を知ってほしい」といった正義感の発露ではないでしょう。
ただ、著者は興味をもって調べていく中で、直面する事実に何度も立ち止まり、悲しみ、同時に哀れみや正義感では解決され得ない構造に悩む。ただそれだけです。
そして、時に熱くなるものの、最終的に変えることのできない「日本人の旅行者」としての立場を忘れない、精神の強さ、新しい世代の距離感を感じます。