「このごろ元気な女性が多くなって」「女性ならではの感性の芥川賞作品も出てきたし」「ぜひ女性の立場で風通しのいい社会つくってほしい」けど「でもこれってぶっちゃけ話題づくりでしょ」「もともと男と女は脳が違う」し「男女差はあって当然」なのに、夫婦別姓って「たかが苗字のことで大騒ぎ」その上「子供もつくらず自由を謳歌しといて年とったら税金でめんどうみろ」なんてふざけんな「ババア」いくら男が「女とみれば襲いかかる黒ヒョウ」といえども「レイプする元気」もなくなるよ。でも「涙は女の武器」泣かれると弱いぜ……これ全部、斎藤美奈子的にはセクハラです。
要は紋切型なんだね、セクハラって。「男がこういうこと言いそうだよなー」と思ってるとまさにその通りに言われるからハラが立つ。フロベールの「紋切型辞典」は、それを読んだ人が恥ずかしくて二度と口に出せなくなってしまう紋切型の言葉を並べた、ある種暴力的な本だ……ということを蓮實重彦の「物語批判序説」で知ったわけだが、これも八十年代には、何かエラソーなこと言うと“それって物語でしょ”と返されてしまう怖い本だった。「物は言いよう」がセクハラ版「紋切型辞典」になって、セクハラ的言説のひとつでもふたつでも封じてくれれば幸い。
それにしても男って不思議な生き物で、強気なセクハラ発言をした人ほど、とたんに気弱になり、自己フォローに走るもその道筋は喋るほどにどんどんねじれ……という哀しき実例の数々をぜひお楽しみください。