クヌートハムスンという小説家の妻マリーの著作で、寡作な彼女の代表作だ。ノルウェーの山村で家族と暮らすオーラとその兄弟の牧童を中心にした物語。近所の仲間たちや、山で出会った遠くの村のキレイメの少女、シブチンの大人やこわ持てなのに実はやさしい教区司祭など多くの人との人間模様を描いている。
偶然従兄弟の家にあったので手にとったのだが、読み始めたとたん私は北欧の山村にいるような気になった。空気の匂いがわかるような気がした。オラやヨンといった子供たちが、身の回りにいるかのごとく喜んだり舌打ちしたり、彼らのまねをしたりといったありさま。真似といっても30歳のおっさんが何をするのか。合コンをしたとき女の子と、「100メートル何秒だった?●●秒?俺の勝ちだな」なんていう会話をした程度。あほらしいけどそれほど彼らの気持ちがわかリ真似したくなるほど迫真の描写で埋められた本だった。
マリーが子供のとき体験したことを物語にしたらしいが、人物描写、北欧の自然の描写が本当に見事。これほどの才能でありながら、あまりに作品が少ないのが残念である。続編「牛追いの冬」も読んだが、もっと色々な作品を発表してほしい人だ。