阪神タイガースの往年の名遊撃手で後に阪神監督を3度務めた吉田義男氏(1933〜)の半生記。日本経済新聞文化欄『私の履歴書』に連載したもの。文庫本化に際して阪神の主な選手(「ミスタータイガース」藤村富美男から現役の鳥谷敬まで)を寸評した「牛若丸の見た猛虎群像」が新たに書き下ろされている。
厳しい家庭環境に耐えながら野球の道へ進んだ少年時代、華麗な守備で「牛若丸」と呼ばれる人気者となった現役時代、そして「天国と地獄」を味わった監督時代までが素朴なタッチで綴られる。
「華麗でほろ苦い」という帯の文句通り栄光に彩られつつも困難や挫折の多かった彼の野球人生。阪神タイガース特有の現場、フロント、本社、マスコミに渦巻く複雑な人間模様との「戦い」には相当苦しんだと思われる。しかしそれでもなおタイガースを愛し、誇り高く歩み続けた姿に深い感銘を受けた。
大リーグ情報をせっせと集めたことやフランスで指導してた頃に独身時代の皇太子妃雅子様に出くわしたことなど面白いエピソードも盛り込まれている。
現在の好々爺然とした雰囲気の吉田氏の向こう側に潜む偉大さが分かる1冊。