生島氏はハードボイルド作家だそうだが、私は『片翼だけの天使』シリーズの作家という印象が強い。
それだけ、当時は騒がれたベストセラー小説である。
いま手にしている本の帯には二谷英明と秋野暢子の写真が印刷されていて、『撮影快調・来春公開!』の文字が踊る。
映画も話題になったのだろう。
独身貴族を気取っていた46歳のバツイチの推理作家、越路玄一郎が友人の売れっ子カメラマンに誘われていった川崎・堀之内のソーププランド『白亜館』で、入店一週間目の韓国籍ソープ嬢『赤城』と運命的な出会いをし、赤城の旦那から赤城を譲渡されて結婚を誓うまでの物語。
この小説にはどう考えても不自然な点がいくつもあるのだが、グイグイと読者を引き込む力があって、気づくといい気分になって小説が終わっている。エンタテインメントのお手本のような娯楽小説である。
普通、風俗で遊ぶ場合、お客も風俗嬢も遊びと割り切っているわけだから氏素性をお互い明かさないのがルールであるし、ましてや店の外でデートするのは御法度。風俗嬢との結婚などありえないはずなのだ。
そういう世の常識を軽々との乗り越えて、運命の出会いだのなんだのと騒いでお互いに強く惹かれ合い、最後には結婚を意識して終わる。
そこが冷静に考えればありえないことなのだが、不思議と違和感を感じないで最後まで読んでしまうのは生島氏の筆力のなせる技なのかもしれないし、氏の私小説という側面もあるからかもしれない。
しかし、越路玄一郎(生島治郎氏)が大陸生まれであり、韓国籍の赤城に向かって、これまで日本が中国や韓国にさんざんしてきた悪行の負い目から、非情なことはできないと、ことあるごとに悩むのは、私には理解に苦しむ部分である。
赤城とのことで思い悩んで、下戸の越路玄一郎が銀座のクラブに出かけ、そこで偶然出会った先輩作家が、やはり韓国籍の女性に負い目を感じており、『あんないい娘はいない。大事にしなくちゃいかん。』っと諭す場面も、私には不思議である。
大陸で少年時代を生きた人には共通の意識なのだろうか??
そこをうまく突かれて、韓国には『慰安婦問題』、中国には『南京虐殺』のカードを振りかざされ、今日の日本がいいように軽く扱われていると思ってしまうのは私だけではないと思うのだが。