学園モノ、刑事モノ、サスペンス、パロディ、本格推理と発表するごとに作風が変化する東野圭吾作品は素材にも工夫が凝らされており、『変身』では「脳移植」、『パラレルワールド・ラブストーリー』では「記憶」、そして本書では「性同一性障害」と常に新しい事柄を題材に取り入れ続けている。
文字だけのシンプルなカバーをめくると、作品のテーマに通ずる絵が施されている。読んでから見るか、見てから読むか。それによって、作品の読み方も変わってくることだろう。(つちだみき) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
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25 人中、23人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
ミステリーに留まらない人間ドラマ,
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レビュー対象商品: 片想い (文春文庫) (文庫)
ただのミステリーに留まらず、昔の仲間との友情、恋、社会問題などを盛り込んだ、読み応えのある長編小説です。 主人公は30代のスポーツライター、そして彼の学生時代のアメフト部 の仲間たちがある事件をめぐって苦悩し、やがて秘密がひとつひとつ明らかになり・・・というようなお話なのですが、なんだか失われた青春、 変わってしまったそれぞれの仲間たち、それでも変わらない友情などが ないまぜになり、とてもせつない気持ちで読みました。 仲間達の一人一人の個性が、アメフトのポジションの役割と重ねて すごくよく描かれています。主人公を始め、私は仲間みんなに 感情移入しながら読みました。そういう人間ドラマ的な魅力がまずひとつ。 それから、実はこのお話の縦軸になっているのが「ジェンダーの問題」。 ミステリーとしての展開も面白く、
28 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
悩みを抱えた3つの家族の片想い,
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レビュー対象商品: 片想い (文春文庫) (文庫)
この片想いという作品は元アメフト部のマネージャーでジェンダー問題に悩む美月ともう一人のマネージャーだった理沙子との夫婦問題に悩む元スタープレイヤーのQBこと哲郎 そして学生時代に美月と付き合ったことがあり、今は資産家の娘婿である中尾 の3つの家族の物語だと私は解釈しています。 今年大ブレイクされた東野さんは離婚されていますが、 1.氏のその経験 2.時折みせる社会的なテーマへの挑戦というかそのテーマを深堀りした氏なりの読者へのメッセージ 3.ストーリーテラーとしての緻密な複線が絡み合う物語の上手さ 4.学生時代のアーチェリー部主将の経験 が見事に折り重ねられて生まれた超一級の小説です。 3つの家族のメンバはそれぞれに悩みを抱えながら、そして自分の信じた・選んだ道を進み やがてそれぞれある終点へと辿り着きます。 そこはまた各人の新たな人生の出発点でもあります。 最後まで読み終えた時、この小説が伝えるメッセージの感じ方は 読む人の人生経験やその時の心の状態で大きく変わるでしょう。 私は2回目に読んだ時は前回に比べて、前向きなメッセージを強く感じました。 かの村上春樹氏は優れた小説とは、読む人の年齢・性別・時代の変化に多面的に対応できる要素を備えていて、 いつまでも陳腐化しないことだと言いましたが、この片想いという作品は正にそんな作品です。
10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
QBの常識的な残酷さについて,
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レビュー対象商品: 片想い (文春文庫) (文庫)
やはり東野らしく暖かな小説です。見た目と内面の不一致は人に混乱と苦悩をもたらしますが,その際立った形として性同一障害をとりあげています。 保守的な常識だけにもおもねらず,ラディカルフェミニズムにもはまらず,主人公であるQBは友人を救おうとします。 しかし,常識的な人間はとても残酷なものです。 彼は何とかしたいとあがきながら,救済することが出来ません。 その姿は著者の思いを反映していると感じました。
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