岩波ジュニア新書の一冊。しかし、大人が読んでも充分に面白い。
著者は「料理の鉄人」として知られる人物。しかし、テレビ番組の放映以前は、父親の陳健民のが著名な存在であった。陳健民は日本に四川料理を伝え、また「きょうの料理」にたびたび出演し、麻婆豆腐を一般に広めていった料理人なのである。
本書は、著者の半生記ともいうべきもので、幼少時から現在までの料理人生が語られている。前半は父親との関係がメインである。同じ道を選んだからこそ分かる父親の偉大さ。父から学ぶものがたくさんあり、同時に乗り越えるべき壁でもある。そのなかで苦悩しつつ、自分の生き方を見つけていく過程が青春小説のようで感動的だ。
後半は自分の道を歩み始めた著者が理想とする料理人としての心得。真面目で説得力があり、尊敬できる。
陳健民の奥さんであり、著者の母親でもある陳洋子について書かれた、吉永みち子『麻婆豆腐の女房−「赤坂四川飯店」物語』と合わせて読んでも面白いだろう。