親子の絆を描いた感動作である。確かに感動作ではあるのだが、
ミステリーとして見ると、もうグダグダという印象。突っ込み所満載
なのである。
殺人を犯して出所した圭一が、事件の根幹を成す重要な事実を
忘れていたというのは、どう考えても不自然である。麻美子の父
である阿久津伸吉にしても、将来の保障が全く無いのに、この
ような行動を取るとは考えられない。麻美子の弟伸吾が容疑者
として逮捕された事件にしても結末が中途半端である。
また、この作品はいつの時代を描いているのかも良く判らない。
携帯電話などが出てくる所を見ると現代なのだろうが、登場人物
の考えや行動を見ていると、20〜30年くらい昔の話ではないか
とも思える。それは多分人物描写に難がある為ではないだろうか。
主人公の麻美子や、その幼馴染の信勝という人物などの描写は
現実感と言うか、現代感覚が感じられない。
とまあ色々と文句もあるのだが、この作品が感動作である事は
間違いない。ミステリーとしてではなく、親子の絆を描いた作品
として読むのが正解なのだろう。