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親友である勇が、このままでは自分たちが日本の歴史の中で逆賊となって貶められると、半ばパニックに陥るのに対して、歳三は風見鶏になることこそ歴史に汚名を残す恥だ、と考え、冷静に判断し、行動する。自分の期待どおりに物事が運ばないとしても、ま、それまでよ、という潔さである。身分や立場が変わっても、多額の金を手にしても、彼の生き方は若い時分から少しも変わらないように描かれている。己の基本的な信念を曲げない点、しかし、よいと判断したものは素直に受け入れて自分のものにする点、常に先を読んで沈着冷静な点、それでいて仲間や部下を可愛がり、俳句を愛でるという別な側面を持っていた点、全てが魅力的である。こういう日本人が存在したのか!という驚きと喜びで胸が躍る。
小説の中では、合戦シーンが数多く登場する。その合間に、恋人お雪との逢瀬という印象的なエピソードが挿入され、大変美しい物語に仕上がっている。鬼の副長が素の歳三に戻って真の恋をする瞬間が優しくも、愛しく、そして、哀しい。
この本を読んで、人間必ずしも勝つためだけに戦うわけではないのだということを初めて知ったように思う。侍魂を持った本当の意味での「ラストサムライ」。それが土方歳三だ。
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