中山さんの足取りは、タイのバンコクに入り、マレーシア、インドネシア、シンガポールからタイに戻る。96年の旅行記になるため現在とは事情が違うであろうが、自分自身の旅行の古い記憶を掘り起こしながら読んだ。
息が止まりそうな暑さと臭い、喧騒。具体的な地名や鮮明な情景は忘れても、雰囲気を思い出しながら読むことはできたし、むしろ、一人旅のなんともいえぬ孤独感に心を重ね合わせながら読んだ。著者の小説の登場人物たちが抱えるアジアの情景の根源を垣間見た気がする。
それでいて、著者のユーモアの精神も存分に感じられるのが本書の魅力だ。しぶとさやたくましさを持った、素敵な大人の女性であることが感じられて嬉しい。
最近、ますますひ弱に、非力になっているからなぁ。こういう旅行に出るには、勇気が足りない。でも、旅に出かけたくなる本だ。
30代の女性が失恋したら、旅に出よう。
その前に、その恋を失ったときには、どこへと知れぬ旅に出て、誰にも知られずに身も世もなく泣けるほどの、そんな恋愛と出会えたら。