アリストテレスの「質の自然学」を克服し、「自然を計算し、秤量し、測定する(to number, weigh and measure)」して定量化していく中で(p.129)、最も身近な自然現象である燃焼の原理や熱とは何かを探る人類の歩みを悠揚迫らず描いていて感動します。
ガリレオ(1564-1642)の温度計は《熱現象の定量化の発端》でしたが、そこから150年後に質量保存の法則を発見したラヴォアジェ(1743-1994)でさえ、燃焼とは物質と空気のひとつの要素である純粋空気が結合したものと主張して、焼素(フロギストン、Phlogoston)が空気中に出ていくという焼素説を追放したにもかかわらず熱素(calorique)を提唱していました。化学に革命をもらしたラヴォアジェでさえ…ということは、どれだけ、燃焼と熱の原理を探る人類の旅が困難を極めたものか、ということを教えてくれます。
「再刊にあたって」で社会的な背景の記述を補った、と書いていますが、《オランダとイギリスは、三次にわたる英蘭戦争にもかかわらず、反カトリック・反フランスという一点で、政治的に密接な関係を保ってきた》(p.206)というあたりから、ニュートンに影響を受けたライデン大学のブールハーヴェの業績を語るところなんかが、そうなんでしょうか(元の単行本を読んでいないのでわからないのですが)。
このブールハーヴェから第2部が始まるのですが、18世紀中期以降、イギリス科学の重心はイングランドからスコットランドに移った、というあたりもなるほどな、と(p.237)。産業革命はスコットランド人が担ったというあたりは、天川潤次郎さんの本あたりをいつか読んでみたいと思いました。