民主主義と言えばとりあえず皆表立って反対はしない。
だが、ではそもそもなぜ民主主義がよいのかといわれると、まさに「他よりまし」としか答えられない人が多いのではなかろうか。
確かにそれは一面では当たっているのだが、しかし民主主義の持つ力をきちんと理論的に本書では考察している。
本書で中心に来るのは「熟議」である。
つまり、きちんと話し合うことにより、お互いに意見の変容の可能性が生まれ、それによって意見を一致させていくという考え方である。
この「意見の変容」というのは案外取りこぼされやすいもので、例えば社会的選択理論などはすべて意見を固定的なものとみなして議論を進めている。
本書では、熟議のもつ効果(話し合いで本当に意見は一致するのか?)を、それへの批判等も十分参照しながら粘り強く論証している。
なお、本書とは関係ないが、最近のマニフェスト政治というのは、マニフェストで書いてしまったことは変えてはいけないので、特に国会における熟議の余地がなくなってしまっているような気がしてならない。
意見対立ばかりに目が行って熟議が忘れられている今日にこそ、熟議民主主義は振りかえられるべきではないだろうか