東南アジアの貧民街で沈没生活を送りながら、バブル崩壊後とはいえ金満国の残り香が未だ漂っていた日本を小バカにして反発する。で、強がってみても実態はタダの貧乏人だということを自己嘲笑しつつ、とりあえず酒を飲む。鴨ちゃんがバンコクにいた時期は、僕も丁度現地でプチ沈没生活を送っていたので、本書に描かれた空気はよく分かる。
ただ、どんなに偉そうなことを言っても、大多数の働いていない外国人は現地人にとって自分探し中の旅行者/傍観者でしかない。本書で鴨ちゃんは東南アジアに生きるダメな連中の姿に、「何者でもない自分」の焦りや自己嘲笑を写し込んでいる。実際、共感もしていたのだと思うが、実はそんな自分が嫌でアル中になるまで酒を飲んで早逝してしまったことからも分かるように、心の底で「何者かになりたい自分」に本当は手を焼いていたのだろう。本巻の文章にはその辺の矛盾した感情が生々しく語られているところが、読みどころといえば読みどころである。ただ、結果的に文章に落としてみてもどっちつかずで深みと詩情に欠けてしまういつもの弱点があるため、星は渋目に点けている。(僕は年を取ってしまい、生きてくだけで精一杯の今、こういう自己矛盾を抱えて立ち尽くしている暇さえなくなっちゃのだろう。)でも、ここに鴨ちゃんがヘタクソな文章で綴った自己矛盾に共感できる人は、星を四つ以上点けるだろう。その気持ちは否定しないし、どこかで共感もしている。