熱処理工場で働く野田達夫。警視庁の、おなじみ合田刑事。
この二人の幼なじみが偶然、再会します。
二人は単なる幼なじみではなく、お互いがお互いに対して複雑な、というかある意味特別な感情を持っていた。そして再会も単なる再会ではなく、一人の女が間にいる、そんな再会。
野田達夫と合田刑事の視点で細かく細かく心理・情景描写がされます。
この小説では、熱処理の工程について細かく描写がされます。これでもかという描写。
話の流れが退屈なわけではないけど、それそのものより、描写される世界がすごい。
照柿色の電車、暑い夏、熱処理工場、照柿色の高炉、工場で発生するトラブル。それから幼なじみと一人の女のこと。次第に男は精神のバランスを崩していきます。
最後に、達夫は合田刑事に電話をかけ、そして合田刑事の後悔。ここはちょっと感動的です。
達夫の人物像や子供の頃の合田刑事との関係が後半でわかります。わかった上でいつかもう一度最初から読み直してみたいと思っています。特に達夫の見ている世界を。しかしもう一度読むのには気合もいるのですが…。
息抜きに読む本ではない。現実世界のほかにもうひとつ、読みかけの本の中に照柿の世界があり、その世界のイメージが頭の片隅にこびりついている、読み終えるまでの日々はずっとそんな感じでした。