元々短編として書いてきた物を長編に纏めたもので、登場人物が割りと多く、それぞれが挿話を抱えながら交差することなく話しが進み、終わるという群像劇ぽい。戦闘シーンも殆どなく、私の読解力の低さか「煙の樹」作戦の意味も解明されずに終わり、読後、煙に巻かれたような気分になる。解説にジョンソン版「エレクトリック・レディランド」ということが書かれてますがジミヘンのその「エレクトリック・レディランド」が個々の曲の質は高いが統一感に欠けると言われており、確かにこの小説と対応しているように思えました。
この小説から読み取れるのはヴェトナムに限らず戦争が単一の言葉や事象で総括出来る物ではなく、善悪二項対立で単純に割り切れず、体験した(してない人も)個々人の胸中の集積であるということ、戦争は終わっても戦争の悪夢は続づくのだと個人的に思いました。
読むのに三日かかりスラスラ読めて面白いけどこの分厚さや価格であまり人に薦める気にはなりませんが、個人的には面白かったです。ヴェトナム戦争に関する小説は多にも、アリソン・ルーリー「エリカの戦争」、ピーター・ストラウブ「ココ」、ティム・オブライエン「カチアートを追跡して」等色々読みましたがこれら傑作と遜色なく楽しめました。