単行本の『無辺世界』に、書下ろし「こんぺい島」「17の質問」が加筆されています。『無辺世界』が出版されて20年も経って、今頃なぜ文庫化なのか?腑に落ちません。加筆された部分が気になって購入してしまいましたが、やはり20年の時の流れを感じます。20年前、どっぷり浸かっていた「銀色夏生の世界」は、やはり加筆されたページには存在しない。長年のファンなら分かると思いますが、単行本の最後になる「少年宇宙」と加筆された部分の最初「チンゲンサイの丘」の間には、線を引いたようにくっきりと温度差があるのです。銀色夏生さんにも、読者の私達にも等しく20年が流れた証拠なのか?と悲しい気持ちになりました。
最近の作品には「どうしちゃったの?」と言いたくなるものが多いので、過去の作品の文庫化には興味を持っていましたが・・・。やはり20年越しのQ&Aや書下ろしは意味が無いどころか、作品の世界観をぶち壊しにしている気がします。20年前の夏生さんは私生活が見えない、顔も知られていない、性別も定かでないミステリアスな人でした。それが作品に付加価値を与えていたと思います。近年では、ご本人だけでなくご家族まで作品に顔出しOKですよね。どういう心境の変化なんでしょう。お子さんが生まれたり、家を建てたり、何かとプライベートなことを作品にされていますので、今さら引き返せないとは思いますが。
夏生さんの初期の作品を愛読するファンの一人として、「作品の良さを半減させるような文庫化はやめてほしい」と言わずにいられない。