白血病を発症した朝日新聞記者による闘病記。しかし、ただの闘病記では片づけることのできない、さまざまな数奇な運命がそこに折り重なり合う。同時期に白血病を発病した、面識のない同僚カメラマン・エンドー君、エンドー君と奥さん、著者と奥さん、著者と弟さん。大病を患うことによる二人称の孤独な世界が、克明に描写されている。
本書を読むのは非常に辛い。治療の辛さや著者の悲鳴が、リアルに伝わってくる。また、人様の人生を、”読み物”という形で冷静に消費している自分自身にも嫌気がさしてくる。それでも、最後まで読み切れてしまうのは、それ以上に冷静な著者の筆力と、抗えない運命に「僕は僕の意思で生きているんだ」と立ち向かう、著者の意思の強さによるものだ。
読んでいる最中、何度も自分が同じ病気になったらということを考えてしまった。平穏無事な毎日が、ある日突然30%という確率論の世界に陥ることの理不尽さ。頑張っても報われないかもしれない非日常な日常。それ以上に大変な周囲の人々・・・
今日ぐらいは、妻に優しくできそうだ。ありふれた日常こそ素晴らしい。