養老先生の本は好きで読んでいますが、読んでいて「なるほど!こういう見方・考え方は面白い!」と思ったのは久々でした。個人的には養老先生の原点にある「唯脳論」、ものの見方のスタンスを明確に提示した「人間科学」、そして本書は先生の著作の中でも、考え方がはっきりしていて、際立って面白いと思います。
「無思想」を普通に考えられている西洋的な「思想」、「哲学」、「宗教」と対比しながら、日本独特の思想であることを明らかにしようとしています。
「哲学」を語るところでは、思想は風土からもたらされ、日本の風土は日本独特の思想(無思想)をもたらすであろうこと、「宗教」を語るところでは、西洋的思想<有思想>」と「無思想」という構造を一神教と仏教との対比によって語ろうとしています。そのためか、同じことを何度も語っている印象もありますが、私にとっては、おかげさまで判りやすくなりました。
また「無思想」を数字のゼロと見立てるところは「なるほど」と思いました。ゼロは何もないことを表しつつ、数字(数学)を支える必要不可欠なものです。たしかコンピュータの祖フォン・ノイマンが定義した自然数も空集合(=0)が起点でしたよね。概念世界の代表である数学・数字との共通性は、「無思想」が思想足りえる根拠のひとつにはなりそうですね。
養老先生も本書の中で言っているように、正しいかどうかは判らないことですが、無思想を日本独自の思想として、その利点(欠点もある)を認識していこうとするモノの見方は、日本人が自分を見つめ世界にスタンスを発表していく際の拠りどころになりうるのではないでしょうか。
「壁」シリーズよりお勧めです!