著者が分析の対象とするのは、無差別に行われた大量殺人。かれら殺人者の生育歴から事件当時の心理状態を、裁判資料や報道資料などをもとに再構成を図りつつ、レヴィンとフォックスの理論に基づいて整理しつつ、分析を加えていく。
なぜ無差別なのか。それを説明するのは投影や置き換え、投影同一視といった精神分析の概念である。
なぜ大量なのか。それを説明するのは誇大な万能感、過剰な自己愛といった概念である。
なぜ殺人なのか。自殺ではなく。著者は殺人ではなく、拡大自殺であると言い換える。
どれもの事件でレヴィンとフォックスの理論で提唱される6要因が揃っていることを確認した上で、著者はそのどれかの要因を防ぐことはできなかったかを検証する。
そこから導き出された著者の結論には、分析の過程と異なり、いささか精彩が欠ける気がした。
なにしろ、これは避けがたい事態であったという再確認にほかならなかったのであるから。解決策の処方箋に妙案はない。
どのような結論が描かれているか、それは各自で読んでもらいたい。そして、各自で考えて取り組むほか、今はできることがないのだろう。