まず、これだけの値段なのに、ビニール封装されていて中身がまったくわからないというのがかなりジレンマだったが、オビ裏の情報から、少なくとも写真が多数収録されているとわかったので、(どの程度の写真かな……とは怖れつつも)清水の舞台から飛び降りる気持ちで買ってみたところ、封を解いて、大正解。カラーの大きな写真がかなり大量に入っていてひとまずはほっとした。写真が並んでいるのは本の後半で、膨大な写真と宇多田語録が並んでいるのだが、写真をぱらぱら眺めながら語録をみるのも結構楽しい。すべて写真家のクレジットが入っていて、写真家によって見せ方がぜんぜん違うなというのがはっきりわかるのも面白い。
また、1万数千字の「書き下ろし」だが、要するに原稿用紙で40枚程度のミニ自伝のようなもの。短いとはいえ、子供の頃からいままでを駆け足で、とても生な感じの自分の言葉で語っていくのが興味深い。とくにデビューしてあっというまにとてつもない有名人になってしまったあたりの感覚など、そうか、彼女も自分たちと同じふつうの人間なんだよな……とあたりまえのことを改めて思って共感を持ちながらも、それでいて、やっぱりすごいと思われるところもぼんぼん出てきたり。
しかし何より本書の魅力は、デビュー時から同時代的に記録されていった膨大なインタビューの数々。デビュー当時は、「敬語が使えない」なんてどうでもいいことが言われたりしていたものだが、内容を見ていくと、16歳にしてすでにいっぱしのプロのアーティストの感覚があったんだなと思える(非常にラフな言葉遣いでありつつ、内容的には彼女がいろんなことを考えていることがよく伝わってくる)。ものすごい量なので、これを一冊読めば、彼女の考え方や人となりがかなりわかるはず。ただこのインタビューに関して一つだけ難を言えば、インタビュー内で言及されている写真やジャケットの写真などがそのインタビューの近くに配されていれば、記事の内容がよりよくわかって面白かったんだけど……とは思った。ともあれ、そんなことは問題にならないほど本当に網羅的な宇多田大事典とでも言えるような内容であり、宇多田を好きな人は必読。次のアメリカで出るアルバムも、成功を祈ります!