「クロワッサン」誌でお勧め書籍として紹介されていました。既に前作「快楽」は読んでいたので、二番煎じなのかなと思いつつ手に取りましたが、前作を更に掘り下げた、充実した内容です。「快楽」が問題提起と概論なら、「炎情」は具体的事例を挙げながらの各論展開。他の方が「快楽」を読んでから読むべきと書かれていましたが、その通りだと思います。きわどい内容なのに、良識的な工藤節ゆえ、読んでいて安心感があります。
このテの問題に興味をお持ちの方ならご存知でしょうが、同じジャンルの書き手として、他に亀山早苗さんがいます。40代の彼女の鋭い筆致が、同世代のまだたぎるような激情が引き起こす悲劇をえぐるのに対し、工藤氏の語り口には、ナイフのような切れ味はないけれども、人生の終着駅に近づいた人の、円熟した落ち着きと温かみがあります。
隣の芝生は青く見えますが、自分だけが特別に不幸ということはなく、皆それぞれ悩み苦しみを抱えて、傷つきながらも生きている。今与えられているものに感謝しよう。そう思わせてくれる本です。