一代で巨万の富を築いた相場師の遺産相続人であるヒロインの周りで起こる連続殺人に、明智小五郎が挑みます。ミステリーとしてだけでなく、人間ドラマ(親子の愛、女性の自立・・・)としても見応えがあり、また、幼児体験の心理的影響が、テレビドラマで正面から扱われた、比較的早い例ではないでしょうか。多彩なテーマを一つの物語にまとめ上げた、江連卓のすぐれた脚本です。そして、監督は村川透。彼らしいテンポのある運びがフレッシュに感じられますし、炎のオレンジ色と、それと対照的な冷たい感じのブルーを所々に配し、視覚的にも楽しめる作品に仕上がっています。
ヒロインを演じるのは早乙女愛です。彼女の持つ華やかな雰囲気が、この作品の第一の魅力と言っていいかもしれません。ヌードはありませんが、サービス・ショットがいくつかあり、達者なディスコ・ダンスも披露しています。演技のほうも力がこもっており、ヒロインが心理的に行き場を失ってゆく様は真に迫っています。男優陣では、天知茂がやはり見事です。少しだけ貫禄がつき始めていますが、男としては逆に美しさを増しています。光線の加減で、髪に白いものが混じっているように見える場面があるのですが(1:04:50以下)、それが実にいいのです。彼の早逝があらためて惜しまれます。その他、鈴木瑞穂の重厚な演技、対照的な二人の青年を演じるジョニー大倉と萩原流行、文代助手の高見知佳(声がかわいい)などが印象に残ります。
1984年に放映された、この作品。女性のファッションや自動車の型、ジャズダンスのような風物にも時代を感じさせる、個性的な作品だと思います。