トラウマ等の米国研究機関2006年発行の原著の邦訳書で、東日本大震災後、普及版として出された。本書は翻訳物なのに違和感がなく、極めて実践的な方法と深い人間理解にあふれ、被災した人が読めば心の支えと慰めになるだろうし、支援者には必読だ。
サイコロジカル・ファーストエイド(直訳だと精神的応急処置、本書では頭文字PFAとしているが、わかりやすい訳がほしいところ)の「8つの活動内容」、つまり「被災者に近づき、活動を始める」「安全と安心感」を提供し、「現実的な問題の解決を助ける」「周囲の人々との関わりを促進する」等が、ケース毎に詳述される。
素晴らしいのは、全員を「被災者」とするのではなく、「大人」「思春期」「子ども」と大別し、つねに敬意を持って応対している点。被災者は、病者でも弱い人間でもないのだから。この姿勢から導かれる支援者の最重要ポイントは、相手に「害を与えない」(これ以上傷つけない)こと、「回復力を促進する」(自立への手助けをする)こと。
そしてたとえば「お気持ちはわかります」「がんばってこれを乗り越えないといけませんよ」「リラックスしなくてはいけません」等の言葉は、あらゆる緊急時に「言ってはいけないこと」(P47)として、心に刻んでおきたい。
後半には、有効な支援のため、実は重要な支援者サイドのセルフケア、周囲からのケアが、支援活動の前・間・後に分けて書かれている。 また「被災者のための資料」には、年齢別に子をもつ
「親への助言」と、「大人への助言」が場面毎に具体的に説かれていて、すぐに使えるようになっている。
自然災害・大事故の多い現状を考えると、心の救急箱として一家に一冊、と言っていいほど重要な本に思われる。