日本図書館協会選定図書 災害救助犬チームのアシスタントを経て、ハンドラー(訓練士)になった女性の体験記。
「災害救助犬チームは有償で働くプロの精鋭たち」と誤解している人は多い。
現実には、災害救助犬チームの大半はNPO(非営利で社会貢献する組織)である。
メンバーや犬たちは資格を有する専門家ではあるものの、無報酬のボランティアだ。
これは、非常時に有志が駆けつけるという、アメリカの古くからのよき伝統の一部でもある。
本書では、著者が災害救助犬チームのアシスタントとして携わった、失踪者や災害現場での捜索の実態が描かれている
(スペースシャトル・コロンビア号墜落事故の捜索では、著者は遺体の一部を発見している)。
そして、それと同時進行の形で、ハンドラーとしての著者と、災害救助犬見習いの子犬“パズル”のペアが、
様々な訓練を経て成長し、その初陣を飾るまでが描かれていく。
ゴールデン・レトリーバーのパズルがやってきた当初、子犬特有の快活さが、
保健所から引き取った先住犬や猫たちとのハプニングを招く。
そのいたずらぶりに手を焼く著者だが、そのかわいさにあふれた描写からは、著者のパズルに対する愛情がにじみ出る。
先の思いやられるやんちゃなパズルだったが、現場に出るまでに、200回以上の模擬捜索が行われた。
簡単なかくれんぼの形で始まる訓練も、次第にその難易度が高くなっていく。
訓練とはいえ、実際の捜索を想定し、藪に覆われた原野、がれきの山、ダメージを受けた構造物など様々な状況で行われる。
実際の捜索では、ハンドラーと救助犬のペアは一心同体とならなければならない。
ハンドラーは犬の発するシグナルを読み取り、適切な判断を下す能力が求められる。
ハンドラーの判断ミスは生存者に対する死刑宣告に等しいからだ。
著者は、捜索ミスに対する不安だけでなく、目の前にどんな危険が潜んでいるかわからない現場で、
しかも暗闇の中を、最愛のパズルを前進させることにも不安を抱く。
だが当のパズルはそんな著者の不安などお構いなしで、実に堂々としたもの。
合図とともに爆発的に飛び出していく。パズルにとっては、この仕事が楽しくて楽しくて仕方がないのだ。
パズルと著者のペアの初陣は、失踪した知的障害のある老人の捜索だ。
気温の低下する中、半裸でさまようこの老人に、低体温症から意識喪失、そして死の危険が迫る。
一刻も早く見つけなければならない…。
著者の単刀直入で大胆な描写は、犬たちの動作、表情、そしてその感情までを、読む人の脳裏に浮びあがらせる。
流産や離婚の過去を乗り越え、救助犬パズルとともに躍動した“生”を生きる女性の物語。