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災害ユートピア―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)
 
 

災害ユートピア―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ) [単行本]

レベッカ ソルニット , 高月 園子
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

不幸のどん底にありながら、人は困っている人に手を差し伸べる。人々は喜々として自分のやれることに精を出す。見ず知らずの人間に食事や寝場所を与える。知らぬ間に話し合いのフォーラムができる…。なぜその“楽園”が日常に生かされることはないのか?大爆発、大地震、大洪水、巨大なテロ―いつもそこにはユートピアが出現した。『ニューヨークタイムス』2009年度の注目すべき本に選出。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

ソルニット,レベッカ
ノンフィクション作家。サンフランシスコ在住。代表作『River of Shadows : Eadweard Muybridge and the Technological Wild West』で全米批評家協会賞ならびにマーク・リントン歴史賞を受賞

高月 園子
東京女子大学文理学部史学科卒業。在英25年(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 440ページ
  • 出版社: 亜紀書房 (2010/12/17)
  • ISBN-10: 4750510238
  • ISBN-13: 978-4750510231
  • 発売日: 2010/12/17
  • 商品の寸法: 19 x 13.2 x 3.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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By らい太 トップ1000レビュアー
 アメリカの地震・洪水、グラウンド・ゼロ、スリーマイルなどで起きた災害の現地共同体についてレポしたもの。

 ここに書かれていることの多くは、どんな被災地でも現地の人間は概ね理性的であり、犯罪は少なく、自助努力と友愛が機能しているということです。そして逆に、指導層や『安全』な所にいる人間ほど「自分以外の人間は理性的ではない(かも知れない)」という妄想にとりつかれて誤った指示や、思い込みを元にしたデマや差別を共同体に持ち込むということ。

 例えばスリーマイル島の避難は、当事者達は誰に聞いても「整然とした避難だった」というのに、メディアからは「どんなパニックでしたか」としつこく聞かれる。アーケードで暴動が起きたという(映画に良くある)デマを元に警官が無辜の市民を人種差別的に撃ち殺すといった、現実に向き合ってる人たちの外にいる人間がハリウッド映画を実現しようと行動する。指導者層が事態を妄想し計りかねて迷走する。こういうケースが数多く書かれています。

 私たちがこの本から学べることは多々ありますが、一番に言えることは“現実的”であること、これに尽きると思います。モノがあるなら奪い合う必要はないし、足りなければ補ったり送ったりすればいい。そしてどうにもならないことについては妄想しない。こういうことだと思います。

 これ自体が若干バイアスがかかっている面もありますが、それを含めて多くの人に読んでいただきたい本です。
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28 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By くにたち蟄居日記 トップ500レビュアー VINE™ メンバー
東日本大震災を念頭に置いて本書を読んだ。

 今回の震災において、日本人の冷静な対応ぶりが世界で評判となった。しかし、本書を読む限り、震災時の市民の互助利他的な対応は日本の特許ではない。本書で展開される世界各国での同様の対応には人類が持つ「社会資本」というものが見える。新自由主義や経済合理性からでは理解できない人間の一つの強さがそこにある。「自分にとっての最適な経済活動」を本能的に取る動物が人間だという考え方から、今回の震災時の市民の対応は説明不能である。
 

 一方、災害時のエリートが見せるパニックという視点は大いに勉強になった。
エリートから見ると、災害とは自分の既得権=権力が失われる重大な危機であり、パニックを起こすという図式は今回の震災からも見えてくる。
特に福島原発を巡る各種混乱は、このエリートパニックという観点で見ると良く理解出来る。原発関連のエリートにとって救助すべき対象は退避している福島県民や農水産業を含む環境問題ではない。それは「自分の地位」なのではないかと感じてしまう場面が多くないか。

但し、現場の「エリート」がパニックを起こしているか。具体的には自衛隊、警察の方を意味するわけだが、メディアを見ている限り、今回の震災で彼らが暴挙を働いたという話はない。これは本書が最後に大きく取り上げているニューオリンズのハリケーンカトリーナの事例と大きく違っている。世界が称賛しているのは、案外現場エリートの沈着な対応なのかとすらちょっと考えた程だ。

日本の社会は閉塞している。赤木智彦という論者は「戦争になる方が良い」とすら語った。戦争になれば、今の固定化された社会が液状化し、弱者のチャンスが来る可能性が、現在より大きくなるだろうという期待だ。
今回の震災は戦争ではない。しかし、日本の社会を液状化させる可能性は秘めている。災害を奇貨と出来るかどうか。それこそが震災が起きてしまった日本の力である。

人間は災害をきっかけに成長してきた。それも本書のメッセージだ。日本は災害が多い国だ。災害が多かったからここまで成長してきたのかもしれない。であるなら、今回の災害をどう克服するのか。それが本書を読みながら絶えず突き付けられた質問であった。
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21 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By nacamici トップ1000レビュアー
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震災、ハリケーン、テロ攻撃といった大災害の直後には、見ず知らずの隣人と家族のように支え合う利他主義的なコミュニティが立ちあがる。また、そうやって立ちあがった共同体が柔軟かつ迅速に、人命を助け、必要なものを最も必要としている人間のもとへ調達する機能を果たす。「これこそ人類にとって理想の社会」と思えるような、高潔さと効率をかねそなえたそのコミュニティはしかし、平時に社会を牛耳っている官僚的組織に時間とともにとってかわられ、敵対視さえされるようになる。なぜ私たちは、この「理想の社会」を平時に築くことができないのか。これが著者の問題意識である。

東日本大震災の直後に「世界がほめたたえた」日本人の冷静さ、勇気、思いやりの精神などは、サンフランシスコ大地震や、メキシコシティ大地震、9.11の直後にも同様にみられたものである。災害学によると、ほぼすべての災害で、火事場泥棒もパニックも滅多に起きないことがわかっているという。一方で、命令系統の存在しない、まったく水平な組織のスピードと創造性には目を見張るものがあることも実証されている。リーダーなき分散型組織のメカニズムについては、『ヒトデはクモよりなぜ強い』という本に詳しいが、災害後には、既存秩序に縛られないヒトデ型組織があちこちで自然発生する。これは人間社会の自然治癒能力のようなものだろう。一方で、一般市民がパニックに陥ってそれが二次災害を起こす……という不安は、権力層のごく一部が抱く一種の妄想であり、「エリート・パニック」という名前までついている、と本書にはある。福島第一原発事故で、管政権は原発が水素爆発を起こし、放射性物質を出し続けているにもかかわらず事態がコントロール下にあり、数日でおさまるかのような発表を繰り返し、周辺住民の避難が著しく遅れたが、絵に書いたようなエリート・パニックである。

東日本大震災は津波の規模があまりにも大きく、原発事故という人災まで併発したため、私たちはいま置かれている状況が特殊であるように感じているが、本書でとりあげられている過去の大災害と符合する部分があまりにも多いことに驚く。ということは、災害の種類にかかわらず、「それ」が起こったあとどのような社会的、心理的現象が起きるのかは、ある程度予想することは可能であり、エリート・パニックおよびそれが引き起こす警察や軍の暴走、被害者への誤解や攻撃も防止することができることも意味している。著者が本書で言いたかったのはまさにこの点だと思う。

災害によって生き残ることがさしあたっての第一目的となり、明日の食べ物や寝床の確保に奔走している状況のなかでは、人々は日頃の立場やそこから来る不安などから解放され、驚くほど寛容にも勇敢にもなることができる。平時にそれができないのは皮肉なことだが、本書であげられているメキシコシティの大地震やアルゼンチンの経済危機のように、大災害によって生まれた一時的な一体感を、よりよい社会を求める革命の糸口にできたケースもある。革命と災害との関連性は興味深い指摘だ。ゴルバチョフは、ペレストロイカ以上にチェルノブイリ原発事故こそがソ連崩壊の真の原因だったと振り返っている。
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