後見人に信託財産を使い込まれ、破産させられた令嬢キャサリン。
彼女はコールドベック伯爵チャールズ・ランドルフと結婚しなければならない状況に追い込まれてしまいます。
「ダンスを数回踊ったことがあるだけの、ほとんど知らない人と結婚なんかできるわけがない」と断固拒否するつもりだったキャサリンですが、
彼女を説得するために自宅にのりこんできたチャールズと会話するうちに、彼に対して思いがけず強い欲望を感じてしまい…。
物語冒頭のキャサリンは勝気な癇癪持ちで、慈善事業に傾倒して理想主義的な意見を掲げる青臭い小娘に思えて
正直「う〜ん。このヒロイン、あんまりかわいくないかも…」と感じたのですが、
チャールズとの関係を深めていくなかで、チャールズに対する感情ととともに、彼女自身もどんどんと変わっていきます。
「無口でよそよそしくて、自分とは正反対の人」と最初はチャールズに無関心だったキャサリンが、彼に欲望を感じ、それから情熱を燃やすようになり、
やがて恋に落ち、彼を強く深く愛するようになっていく…。
そうしたなかで彼女のなかにあった硬直した部分がやわらかく溶かされて、彼女を覆っていたとげとげしていた部分がなくなり、
彼女は勇気と愛情と包容力にあふれた大人の女性へと成長していく…。
蝶の羽化にも似たその様は見事というよりほかありません。
そして、感受性豊かなキャサリンとともに過ごすうちに、チャールズも変わっていきます。
冷たい灰色の瞳をした、無表情のコールドベック伯爵の変化と、物語のラストの彼の台詞はとても感動的。
感情移入しながら読んでいた、わたし自身も同様に浄化され、癒され、解き放たれたような気持ちになりました。
物語は、ヨークシャーのチャールズの領地で起こる猟奇的な連続婦女殺人事件も絡んで進行します。
犯人らしき男の描写が随所にあり、彼の標的がキャサリンであることが早い段階から読者にはわかるので、サスペンスの要素もばっちり。
それから、ハーレクインなので露骨な描写はありませんが、チャールズとキャサリンの関係はかなりセクシー。
そういう意味でも、どきどきしながら楽しめました。
チャールズの、キャサリンへの気遣い、思いやり、そして強い情熱は「こんな風に愛されたい」と強く感じさせてくれます。
同様に、キャサリンのチャールズに対する、率直で、誠実で、あたたかく包みこむような優しさに「こんな風に愛せたら…」と思わずにはいられません。
とても素敵な作品です。
この作品にはスピンオフがあり、チャールズの義理の甥(妹ヘレンの継子)、ロンズデール伯爵ヴィンセントがヒーローとして登場します。
ある意味で今作最大の悪役ともいえるヴィンセントのその後が知りたいので『ダイアナの秘密』もこれから読んでみようと思っています。
※コミックスは読んでいないので、このレビューの内容があてはまるかどうかはわかりません。