「ミステリーの女王」P.D.ジェイムズも本作刊行時には御年85歳、でも筆の衰えはまったく感じられません。
相変わらずの重厚な筆致で、ダルグリッシュ警視長の推理が堪能できます。
静穏と休息を求めて孤島にやってきた地位もお金もある人々。
イギリス本土から孤立した閉鎖的な空間で起きた殺人事件の解決にあたるダルグリッシュ
(と部下二人)を翻弄するかのような謎めいた人間関係が、少しずつ解きほぐされていきます。
ジェイムズ作品の魅力のひとつは、丹念に描き出された登場人物だと思うのですが、
本作でも著名な作家と娘、過去の医療ミスに苦しむ医師夫妻、貴族的な老嬢など個性的な
人物が織りなす人間模様が丁寧に描写され、純文学のような読み応えを感じさせます。
個人的には『死の味』がダルグリッシュ・シリーズの最高傑作だと思っていますが
本作は近年のどの作品よりも面白く、『死の味』を読んだ時の興奮を久々に思い出しました。
ある事情で捜査を継続できなくなったダルグリッシュに代わって、今回はケイト・ミスキンと
ベントンースミスが大活躍します。
人間的に深みを増していくケイトの成長ぶりも、このシリーズを読む楽しみのひとつでしょう。
気丈で知的な彼女、本作ではとても魅力的です(ケイト・ファンは必読です!)。
またダルグリッシュの身にも・・おっと、この先は本を読んで確かめてくださいね。