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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
四秒に一度照らされる人生,
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レビュー対象商品: 灯台守の話 (単行本)
全編を通してちりばめられた遊び心を楽しんだ。主人公シルバーを灯台の光と考えると、物語の主軸にもなっている牧師、バベル・ダークは真っ暗な海面のようだ。(文字通りなんだけれど)また牧師という職業がらバベルという名前は言わずもがなの「バベルの塔」を連想させる。そしてこの灯台こそが「バベルの塔」の象徴ではないかと想像してしまう。四秒に一度海を照らす灯台の光。真っ暗な海面を切り裂くようにまたたく光の中に現れるふたつの人生の断片。100年もまえに生きた男の人生と、シルバーの人生が交差する。神職にありながら二重生活を送るバベルの苦悩。ときまさにダーウィンが「種の起源」を発表し、天地創造でさえ神のなしたわざではないと知ってしまったバベル。海辺の洞穴で見つけたタツノオトシゴの化石は、彼が精神的にも生物学的にも神の子ではなくなったことの象徴だろうか?物語にはダーウィンも、「ジキル博士とハイド氏」の作者であるスティーブンソンも登場する。ふたつの物語は時間も空間も越えて、あちこちに飛びながら語られ続ける。そしてシルバーがそれらの光を自分の物語で結んでいく。少々難解なことも確かだが、読み応えはありました。
9 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
<物語ること>で人は救われる,
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レビュー対象商品: 灯台守の話 (単行本)
訳者あとがきで紹介されている、著者の言葉がすべてだ。「自分自身をつねにフィクションとして語り、読むことができれば、人は自分を押しつぶしにかかるものを変えることができるのです」。著者の「物語観」は以下の登場人物同士のやりとりに表れている。 「いや、そうではなく、あなたが書いているのは一つの人生についてですか、それとも複数ですか?自分にはいくつもの人生があると、感じることはないですか?」 「それはもう。たった一つきりの物語を話すなんて、そんなの不可能です」 「しかし、そうするべきかもしれませんよ」 「始まりがあって、真ん中があって、終わりがあるような?」 「ええ、まあ、そんなようなものです」 そう、人は物語を聞くこと、自ら物語ることで、幾つもの他者の人生を生きることが出来る。あるいは、仮に一つの人生を一冊の本になぞらえたとしても、人生は一人では完結しないことがわかる。その人がたとえ死んだとしても、力のある物語は繰り返し他者によって読まれだろうし、その読まれ方は少しずつ別の物語、別の人生として読まれるのだ。 文中の言葉を借りれば、「この世の中は、買うか、出ていくか。二つに一つの世界だ。愛は関係なしだ」とか、「そのうち船から船乗りがいなくなって、飛行機からパイロットがいなくなって、工場がロボットだけになって、電話もコンピュータが返事して、そしたら人間はどうなっちゃうんでしょう?」っていうように、どんどん人間の力が衰弱しつつあると思うんだけど、こんな世の中だからこそ、物語の力を信じる楽観主義こそが必要だって思うのだ。
7 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
人を愛し信じ続ける事で、人生は幸せに導かれて行くのだろう。,
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レビュー対象商品: 灯台守の話 (単行本)
1985年「オレンジだけが果物じゃない」でデビュー以来イギリス文学界をリードしてきた女流作家ウィンターソンが2004年に発表した傑作長編です。著者は孤児として生まれ、その後紆余曲折があって苦労され、また90年代には批評家の誤解を招いて批判されるという辛い経験をされたそうです。本書は著者の分身のような孤児となった少女シルバーが不思議な盲目の灯台守の老人ピューに引き取られ、夜毎に100年前に生きた牧師ダークの人生の物語を語り聞かせられる事で貴重な何かを学んでいき、世間に揉まれて苦労しながらも、人生を乗り越えてゆく物語です。老人ピューとシルバーの会話で、ハッピーエンドのお話をねだるシルバーに、この世におしまい(エンド)などありはせん、と返すピューの禅問答めいた掛け合いの言葉が印象的です。私が本書の中でもうひとつ心に残ったのは、牧師ダークが独白する言葉「彼は自分の人生の異邦人だった」で、ダークは裕福な身で前途洋々たる人生を送っていながら、ふと心に懐疑の念を抱いた為に道を踏み外して迷い何時しかジキル博士とハイド氏の如き二重人格の悪党に成り下がってしまいますが、自業自得とはいえ急激に襲い掛かった運命の過酷さを思うと深い憐れみを感じずにはいられません。ダークとシルバーの人生の対比を考えると、幸せと不幸せはほんのわずかしか距離がなくて、例えば信じる事と疑う事が人を一瞬の内に光と闇に分けてしまうのだろうかという思いに駆られました。
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