この小説を読むまで、ロチェスターの妻、バーサがクレオールだと意識して「ジェイン・エア」を読んだ事はありませんでした。この小説を読んだ後に読み返してみると、やはり前のように手放しで面白いとは言い切れなくなります。勿論それはシャーロット・ブロンテの生きた時代の限界を反映しているだけなのですが。私も有色人種の女で、キリスト教徒ではありません。立場としては、バーサと変わらないと思うと愕然とします。同時に自分なりの視点や思想、定義といったものが、果たして本当に自分なりのものなのか、自らに問い直してみる事になります。作者のジーン・リースは寄って立つ所ない女を描かせると素晴らしいんですが、同時代の女流作家には、弱くて流されやすい女しか書かない、と非難される事がしばしばだったそうです。何の後ろ楯も、生活者としての武器一つ持たずに一人で流されるままに生きる・・・でも、世の中の大半の人間は、そんな寄る辺のない存在の筈。普段は忘れていたい人間の愚かさや弱さを焙り出す筆致は、ある意味残酷極まりないと思います。でも、寄る辺ない人間が増える一方の、こんな時代にこそ、その普遍性が露になる小説だと思います。自分の頭の柔らかさに自信のある、特に男性に読んで頂きたい小説です。