死者の祭り。骸骨の饗宴・・・。メキシコほど、「死」に魅せられた土地はない。
それ故か、男たちはメキシコに死地を求める・・・。
「20世紀最高のアル中小説」と呼ばれる、マルカム・ラウリーの「火山の下」(祝・新訳復刊!)を
巨匠ジョン・ヒューストンが映画化。
1938年・メキシコ。火山の麓の町で、最愛の妻に捨てられ、酒浸りの日々を送る元英国領事(アルバート・フィニー)。彼の元に舞い戻った妻(ジャクリーン・ビセット)と元領事の異母弟(アンソニー・アンドリュース)の3人が「死者の日」に生と死と愛の狭間をさまよい、やがて破滅に至る物語。
とにかく、主人公がいい。妻が逃げたと嘆いては酒に溺れ、戻ったら戻ったで許す事ができず、ますます酒に溺れ、飲んではからみ、酒を呷っては泥酔し、ひたすら堕ちて行く。こんなに飲みっぱなしの映画、観た事ない(笑)。
デカダン?破滅型?痛みと苦悩に、ここまで自虐的に取り憑かれた物語が他にあるだろうか。
オーソン・ウェルズやジョセフ・ロージーも映画化を切望したという(それぞれのバージョンも観てみたいものだ!)
幻想と怪奇の作家、アンブローズ・ビアスはメキシコ革命の戦火の中に消えた。
「ブラック・ダリア」(原作)のリー“ミスター・ファイア”ブランチャードは、逃亡先のメキシコでのたれ死ぬ。
マックス・フォン・シドーとイヴェット・ミミュー主演の「メキシコで死ね」では、賞金首の奪い合いの果てに、男たちは自滅していく。
「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」は、親友の遺体をメキシコに埋める旅の物語だ。
多くの男たちの死を、その懐に抱いてきた土地、メキシコ。
そんな破滅のドラマの、孤高ともいえるのが本作「火山のもとで」ではないだろうか。
ラスト、主人公が非業の最期を遂げるのは、もはやネタバレの内には入らないと判断し書かせて頂くが、実はそのいまわの際に彼が漏らすセリフが、何ともたまらんのだ!それこそが最大のネタバレと解釈し、気になった方は映画を観てのお楽しみ、という事で・・・。
ジョン・ヒューストン作品は「白鯨」の“手招きするエイハブ船長”はじめ、オブセッションに満ちた数々の傑作揃いだが、ええい、言ってしまえ、「火山のもとで」が最高傑作だ!
デカダン(といっても「愛の嵐」みたいなヤツじゃないけど)大好き映画ファンのバイブル、一刻も早くDVD化を望む!もちろん、インタビュー等の特典満載で。
しかし、ジャクリーン・ビセットに「やり直せない・・・?」なんて言い寄られたら、フツー、男だったら喜んで酒なんか捨て・・・いや、失礼!