不可能犯罪ミステリの巨匠カーの代表作のひとつとして
題名は知っていたものの、
読んだことのなかった本書をこのたび読み終えました。
<婦人毒殺魔が流行のように輩出した
十七世紀と現代が妖しく交錯し、
カー独特の世界を創出した第一級の怪奇ミステリ>
という作品紹介が裏表紙にあります。
そう、この作品こそ、
ミステリとホラーの融合が果たされた
元祖というべき作品なのです。
作品の中核をなすのは、死体消失のトリックです。
胃腸炎で死亡した老人に毒殺の疑いが生じ、
墓を暴くことになったのですが、
確かに埋葬されたはずの死体が
棺から消え失せていたのです。
一体誰が、どうやって死体を持ち去ったのか、
その鮮やかなトリックは
作品後半で明かされることとなります。
しかし、これで終わってしまっては、
本書はカーの代表作とはなり得なかったでしょう。
本書の醍醐味は、謎解きが終わったあとの
「エピローグ」にあります。
ミステリ的解決とは違った、
ホラー的解決が待っているのです。
このラスト、カーに続くミステリ作家達の小説を
数多く読んでいる現代の読者としては、
衝撃と呼べるほどのものではなくなっていると思います。
しかし、これが元祖ということで読む価値はあり、
と感じました。
その趣向は現代の作家達に引き継がれていて、
全く色褪せてはいません。
「火刑法廷」という題名も、
読み終えてみると作品の趣向を如実に表していて、
とても印象深いものとなっています。